
忘れた理由?それは聞かないで
【ADHDに伝える⑤】
「あれ、頼んでおいた牛乳は?」
「あっ…ごめん…忘れてた…」
そのたった一言で場の空気が凍りつく。
ADHDパートナーの方の顔に浮かぶ、深い深いため息と諦めの表情。
その視線が、僕らの心に突き刺さる。
「どうしてこんなに大切なことを忘れるの?」
「私のことなんて、どうでもいいんだ」
違う。決してそんなことはない。
心の中で必死に叫んでいるのにその声は言葉にならない。
そして、僕らは、自分自身に、深く絶望するのです。
「なぜ、僕は、愛する人を、こんなにも、がっかりさせてしまうんだろう」と。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、ADHDの僕らの、このあまりにも厄介な「忘れっぽさ」の正体。 そして、その悲しいすれ違いの連鎖を、たった一言で、断ち切ることができる、魔法の言葉について、お話しします。
まず、何よりも先に、知っておいてほしいことがあります。 ADHDの僕らが、大事な約束を忘れてしまうのは、決して、パートナーのあなたへの愛情が、足りないからではありません。
僕らの脳に搭載された、「短期記憶(ワーキングメモリ)」という名の「机」は少しだけ小さいのです。 たくさんの情報(タスク)が、常にその机の上に置かれようとします。 そして、新しい刺激的な情報がやってくると、古い情報は、悪気なく机の上からポロリとこぼれ落ちてしまう。
僕らは、その「こぼれ落ちた事実」にあなたから指摘されるまで気づくことすらできません。 そして、その時僕らが感じているのは、あなたと同じ、あるいはそれ以上の「絶望」なのです。
では、どうすれば、ADHDのパートナーの方と彼は、この悲しい「すれ違い」の壁を乗り越えることができるのでしょうか。
大切なのは、僕らが何かを忘れてしまった時、「なぜ?」という質問をするのをやめてください。 「なぜ、忘れたの?」という正論は、多くの場合悲しい結論に繋がるだけです。
その代わりに、僕らが、心の底から本当に聞きたい言葉。 それは、僕らの状況を理解してくれること。また未来志向で次の解決策を出すことです。
これまでの伝え方:
「また、牛乳、忘れたの?」
「なんで忘れたの?」
(→僕の脳は、これを「攻撃」として受信し、心を閉ざします)
僕らが、本当に「言ってほしい」言葉:
「また買いに行ったら良いよ。」
「このあと散歩でも一緒にしに行ってその時買おうか?」
この、伝え方は、ADHDの僕らの脳を、確実に、ポジティブな方向へと、動かします。 なぜなら、これは、僕にとって、「能力不足への批判」ではなく、「僕のこの不器用な脳を、あなたが一緒にサポートしてくれる」仲間だという認識されるからです。
大切なのは、ADHDの僕らが何かを忘れてしまった時、「なぜ?」という質問をするのをやめてください。そこに理由が存在しないからです。そして、未来志向で問題の解決策を一緒に考えてあげてください。きっと彼はあなたを信頼して心を開いてくれるはずです。
ADHDに伝えるシリーズの第一話はこちら
【ADHDに伝える】シリーズ
①ADHDが本当に欲しい言葉~信頼の言葉~
②常識や普通と比べるのはやめて
③ADHDのエンジンの掛け方!よーいドン!
④「また」「いつも」「どうせ」って言わないで
⑤忘れた理由?それは聞かないで
以前にも、ADHDパートナーの方に向けてのシリーズを書いています。
ADHDパートナーの人は是非こちらも読んでみてください~^^
①なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
②なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
③なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
④なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
⑤彼との関係に絶望しているあなたへ
⑥彼を「変える」のを諦めた日に全てが始まった
⑦「カサンドラ症候群」からあなたを救いたい