
なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
【ADHDパートナー①】
「それでね、今日、会社でこんなことがあって…」
あなたは、今日あった出来事を、彼に話しています。 嬉しいこと。悲しいこと。腹が立ったこと。 ただ、一番大切な人に、この気持ちを共有したい。 ただ、それだけなのに。
ふと、彼の顔を見ると、その目は、どこか遠くを見ています。 相槌は打ってくれる。でも、明らかに、心はここにない。
その瞬間、冷たい、悲しい感情が波のように押し寄せる。
「私の話、つまらないのかな」
「彼は私に興味がないのかもしれない」
「私は彼にとって大切な存在じゃないんだろうか」
その、息が詰まるような孤独感。 あなたは、これまで、一人で、その感情と戦ってきたのではないでしょうか。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。
今日から、ADHDの特性を持つ人のパートナーである「あなた」のための新しいシリーズを始めます。
これは決して、あなたに「我慢しなさい」と伝えるためのものではありません。ADHDのパートナーの方の、不安や、悲しみの「正体」を一緒に解き明かし、二人が、最高の「パートナー」になるための、コミュニケーション方法を伝えるための物語です。
まず、何よりも先にお伝えしたい、たった一つの真実があります。
ADHDの彼が、あなたの話を、時に聞けなくなってしまうのは、あなたへの愛情が足りないからでは決してありません。
彼の脳内で、一体、何が起きているのか
良くあるのは、こういうパターンです。あなたが、彼に話をしている時。 あなたの言葉の中の、たった一つの単語が、彼の脳の全く別のスイッチを押してしまうことがあるんです。
それによって、彼は脳内で別の考えに移動してしまうのです。
(…待てよ。そのアイデア、明日使えるんじゃないか?)
(…そういえば、あのゲームのやりかたまだ調べてなかったな)
(…この話、昔、僕が経験したあの失敗と構造が似ているな)
その瞬間、悪気なく、あなたから、その新しく生まれた「思考」へと移動してしまうのです。体は、あなたの前にあっても、彼の意識は、脳内で始まった、別の事に夢中になってしまうのです。
これが、彼が、あなたの話を「聞いていない」ように見える原因です。
この時に、考えていることを口に出すタイプのADHDの人もいますし、
口に出さずに脳内で完結してしまうADHDの人もいます。
僕はこの特徴を理解しているので、相手が何かを話だした時は、自分の意識や、何かしているならその手を止めて、相手の方をみて話を聞くようにしています。彼女の話の途中で、つい何かが思い浮かんでしまった場合は、相手が誤解しないようにそれを口にするようにしています。また、そんな風にいつもできたら良いですが、できてない時がちょくちょくあることも自覚しています。
そんな僕が、ADHDのパートナーの方にアドバイスをするとしたら、一つは、会話の前に相手の注意を自分に向けることが大事です。
「大事な話をしたいんだけど」とか「大事な話をしているんだけど」みたいなフレーズにはADHDの彼は反応しやすいと思います。そんな風に言われたら、僕だったら一気に注意を彼女に移します。そのような注意を向けるためのフレーズを使うと効果的だと思います。
あとは、彼の脳内での話を面白がることも大事だと思います。今の僕のパートナーは、思いつきでやることや話すことに対して笑ってくれるので、僕としてもすごく話しやすく感じています。
それをバカにされたりすると、冷めた目線で、そんなことするの止めてといった感じの態度を取られると、ADHDの彼も話さない方が良いと学習してしまいます。そうすると、脳内で起きていることを話さなくなるので、ADHDの彼のことが理解不能になってしまうのだと思います。
あと、歩きながら話すのも効果的です。もし大切な話をしたいなら、近所を散歩しながら話してみてください。ADHDの彼も歩きながらだと、相手の話に集中しやすくなります。個人的にも散歩しながら友達や恋人と話をするのは大好きです。
ADHDのパートナーの人が感じるであろう、あのどうしようもない孤独感。
それは決してあなたのせいではなく、あなたの話したいこととADHDの彼の関心がただ合ってないというだけです。ちょくちょく合わせられないことも起きると思いますが、それはあなたの事を愛していないということではありません。
どうかそんな風に思わず、「まーた、注意がそれているよ」と彼の注意を正しいところにもどしてあげてください。
ADHDパートナーシリーズ
①なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
②なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
③なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
④なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
⑤彼との関係に絶望しているあなたへ
⑥彼を「変える」のを諦めた日に全てが始まった
⑦「カサンドラ症候群」からあなたを救いたい