
運動は「最高の処方箋」【ADHD離婚からの再生④】
僕は、何も予定のない週末が、少し苦手です。 できれば、午前、午後それぞれに予定を入れたいしたい。たくさんの人に会って、たくさんの刺激を受けたい。
僕の場合は、空白の時間があると、まるで手持ち無沙汰になった子供のように、「何か面白いことはないか?」と、ソワソワし始めます。
「そんなに動いて、疲れないの?」 今の彼女からは、よくそう言われます。
昔は、そんな自分のことを「俺って落ち着きのない人間だな」と思っていました。 しかし、ADHDについての理解を深めた今は違います。これは、僕の脳に搭載された「最強のエンジン」が、常にアイドリングを続け、「さあ、走り出そうぜ!」と、僕に合図を送っている状態なのだと、誇らしくさえ感じています。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコです。 これは、僕が自身の「内なる多動性」を、ネガティブなイメージのものから、人生を豊かにする最高のエネルギーへと変えるまでの物語です。
「健康のため」に始めた習慣の、意外な効果
離婚後、僕は、自分の人生を再構築するために、いくつかの新しい習慣を始めました。 その一つが、友人との「皇居ラン」であり、「ヨガ」でした。
正直に言うと、これらは、特にADHDに良いから、という理由で始めたわけではありません。 単純に、「健康のため」でした。お酒とタバコをやめた今、新しい健康的な趣味が欲しかったのです。
しかし、これらの習慣を続けるうちに、僕は、自分の心に起きる、ある不思議な変化に気づき始めました。 10キロを走り終えた後の、爽やかな疲労感。ヨガで、自分の呼吸だけに集中した後の、頭の中のクリアな感覚。 それは、単なる「運動後の気持ちよさ」だけでは説明できない、脳の奥が「満たされる」ような、深い満足感でした。
なぜ、これほどまでに、僕の心は「ととのう」のだろう? その答えを探し始めた時、僕は、ADHDと運動に関する、驚くべき事実を知ることになります。
ADHDの脳にとって、運動が「最高の処方箋」である理由
ADHDの脳は、集中力やモチベーションを司る脳内物質「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」が、不足しがちだと言われています。そして、ランニングやヨガといった有酸素運動は、このドーパミンやノルアドレナリンの分泌を、自然な形で促進する、極めて効果的な方法だったのです。 つまり僕は、「健康のため」にやっていたつもりの運動で、無意識のうちに、ADHDの自分の脳に最も必要な「栄養」を、自ら作り出して与えていたのです。
この事実を知った時、全てのピースが繋がりました。僕が、予定のない週末を嫌うのも、 本の少しの時間でも何かをしたいと感じるのも、 僕の「内なる多動性」が、常にドーパミンという「燃料」を求めて、アイドリングしているからなのだと。
そして、運動は、その有り余るエネルギーを、最も健全で、最も効果的な形で燃焼させ、脳を最高の「整った」状態にしてくれる、最高のソリューションだったのです。
もし、あなたが自分の中の「落ち着きのなさ」や「常に何かをしていたい衝動」に悩んでいるのだとしたら。 それは、あなたが人よりもパワフルな「エンジン」を搭載している素晴らしい証拠です。
大切なのは、そのエンジンを無理に止めようとすることではありません。 そのエネルギーを、どこに向けて、どうやって燃焼させてあげるか、その方法を見つけることです。
僕にとっては、それがランニングやヨガでした。 あなたにとっては、ダンスや、登山、あるいは、創作活動かもしれません。あなたの「多動性」は、決して欠点ではない。 それは、あなたの人生を、他の誰よりもエネルギッシュで、刺激的で、豊かなものにするための、神様からの贈り物なのですから。
【ADHD離婚からの再生】シリーズの最初の記事はこちら
【ADHD離婚からの再生】シリーズ
①ADHDの禁酒と禁煙
②禁酒後の新しい世界
③「動」と「静」で脳を整える
④運動は「最高の処方箋」
⑤習慣化できますか?
⑥「失敗だらけの過去」の意味