凸凹ADHD

 

禁酒後の新しい世界【ADHD離婚からの再生②】

 

禁酒に成功し、僕は人生の主導権を少しだけ取り戻した。 二日酔いのない爽やかな朝、クリアな思考。破壊的なループから抜け出したことで、心には確かに平穏が訪れていました。

しかし、すぐに、新たな、そして予想外の「敵」が姿を現したのです。 それは、耐えがたいほどの「退屈」でした。

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 これは、僕が破壊的な刺激(アルコール)を手放した後に訪れた「心の空白」を、いかにして「最高の刺激」で埋めていったか、その物語です。

週末の夜、ぽっかりと空いた時間。 これまで僕の脳を強制的にハイにしてくれた、アルコールという「カンフル剤」はもうない。 この静かで退屈な時間をどう過ごせばいいのか、僕は途方に暮れていました。

その時、ふと、これまでの自分を振り返ってみたのです。 僕が飲み会で本当に楽しんでいたのは、何だったのだろうか? 酔うことそのものだったのか?

いや、違う。 僕が求めていたのは、予測不能な会話、知らない誰かとの出会い、新しい価値観に触れる、あの「刺激」そのものだったのだと気づきました。つまり、僕が依存していたのは「アルコール」という物質ではなく、それがもたらしてくれる「高強度の刺激」だったのです。 だとしたら、やるべきことは一つでした。 アルコールよりも、もっと知的で、もっと建設的で、もっと面白い「刺激」を、シラフの世界で探せばいいんだと。

幸いなことに、僕のADHDの脳には、「新規追求性」という、素晴らしい才能が搭載されていました。新しいことを始めることへのためらいがなく、むしろ、知らない世界に飛び込むことを楽しんでしまう特性です。
大学時代のアメリカ留学、社会人になってからの起業、プライベートに置いてもバーでお酒を飲むことにハマったのも、この知らない世界に飛び込むことが好きだったのが理由だったのかと理解しました。僕は、この才能を使って、全く新しい「対話の場」を探し始めました。

その最初の一歩が、学生時代の留学経験を活かせる「英会話カフェ」でした。 そこでは、国籍も、年齢も、職業もバラバラな人たちと、英語だけで話します。ロシアから来たエンジニア、イスラエルからの留学生、台湾や中国、ヨーロッパから来たビジネスマン…。

僕がこれまで出会うことのなかった人々と、彼らの国の文化や、考え方の違いについて語り合う。 その一つ一つの会話が、かつてアルコールが与えてくれた興奮とは比べ物にならない、最高に知的な「刺激」として、僕の脳を満たしていきました。

この時、僕は自分の「得意分野」も再認識しました。 僕は、大人数の輪の中で、全体と調和をとりながら会話するのは、今でも苦手です。 しかし、知らない相手と小人数、または一対一で、互いの興味を探り合い、一つのテーマを深掘りしていくようなコミュニケーション。それは、僕のADHDの脳が持つ「過集中」と「好奇心」が、最大限に発揮される、最高の得意分野だったのです。

もし、あなたが今、何か一つの悪い習慣や、特定の人間関係を手放せずにいるのだとしたら、一度自分に問いかけてみてください。 「自分は、その習慣そのものではなく、その奥にある、どんな『本質的な欲求』を満たそうとしているのだろう?」と。

僕の場合、それは「飲酒」ではなく「刺激的な対話」でした。悪い習慣を手放すことを、恐れないでください。 あなたが本当に求めているものの正体に気づけたなら、その空白は、もっと豊かでもっと刺激的な何かで、必ず埋めることができます。 一つのドアを閉めたことで、僕は、これまで存在すら知らなかった、たくさんの新しいドアを見つけることができたのですから。

【ADHD離婚からの再生】シリーズの最初の記事はこちら

【ADHD離婚からの再生】シリーズ
①ADHDの禁酒と禁煙
②禁酒後の新しい世界
③「動」と「静」で脳を整える
④運動は「最高の処方箋」
⑤習慣化できますか?
⑥「失敗だらけの過去」の意味

 

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