
短期的な快楽に飲み込まれる
【ADHDとドーパミン②】
「もう、やめよう」 そう頭では分かっているのに。 僕の親指は、意思とは無関係に、スマホの画面をスワイプし続ける。
次から次へと、流れてくる新しい情報。 その刹那的な「興奮」に、僕らの脳は支配されていく。 そして、気づけば、何時間も過ぎ、僕らの心に残るのは、「時間を、無駄にしてしまった」という、深い自己嫌悪だけ。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、僕らの脳が、なぜ、短期的な快楽の「沼」にハマりやすいのか。 そのメカニズムと、その沼から、抜け出すための方法についてお話しします。
前回の記事で、僕らの脳は、常に「ドーパミン」に飢えている、という話をしました。 その、飢えた僕らの脳は、常に、最高の「刺激」を探しています。
そして、僕らの脳はせっかちです。 手間暇をかけて、持続的な満足感を得られる活動(良いドーパミン)よりも、 手軽に、そして、強烈な快感を得られる「短期的な快楽(悪いドーパミン)」に、つい飛びついてしまう。
悪いドーパミン
-
SNSの、無限スクロール
-
スマホゲームや、ネットのショート動画
-
砂糖や、ジャンクフードの、過剰摂取
-
ギャンブル
-
衝動的な買い物や、性的関係
-
アルコール、タバコ、薬物
-
ポルノへの依存
-
ゴシップや、ネットでの他者批判
-
エナジードリンクなどの過度なカフェイン摂取
-
危険な運転
-
過度な仕事(ワーカホリック)
-
新しい恋愛の初期の興奮だけを追い求めること
これらは、脳に大量のドーパミンを与えてくれます。 しかし、その強烈な「快感」こそが、僕らの脳を蝕んでいく恐ろしい「罠」なのです。脳には厄介なクセがあり、どんな刺激にもすぐに「慣れて」しまうということです。
手軽で強烈な刺激に、毎日、さらされていると。 脳は、その強い刺激に、少しずつ麻痺していくのです。 昨日まで、一杯のお酒で満足できていた脳が、今日は、2杯、3杯と飲まないと、満足できなくなってしまう。 これこそが、「ドーパミン耐性」という名の終わりのない「渇き」の正体です。
そして、この「渇き」が、僕らの日常から、ささやかな「喜び」を奪い去っていきます。 友達との何気ない会話。 窓の外の美しい景色。 昨日まで、僕らの心を潤してくれていたはずの優しい刺激では、もう僕らの脳はドーパミンを出してくれなくなってしまうのです。
では、どうすればいいのでしょうか。 「スマホを、やめよう」「お酒を、断とう」 そのあまりにも「正しい」目標は、僕らの前では無力です。 なぜなら、それは僕らの脳に「退屈」という名の、苦痛を与えるだけだからです。
ADHDの僕らがすべきこと。
それは「我慢」ではありません。
「置き換え」です。
手軽で、短期的な快楽(悪いドーパミン)を我慢するのではない。 それよりも、ほんの少しだけ、手間はかかるけれど心と体が本当に喜ぶ、建設的な活動(良いドーパミン)を僕らの脳に与えてあげるのです。
例えば。 あなたが、無意識に、スマホの沼に足を踏み入れそうになった、その瞬間。 その5分間を、未来の自分への「投資」に、変えてみるのです。
この、小さな「交換」は、あなたの人生を、劇的に変えるかもしれません。
なぜなら、それは、あなたがドーパミンの「奴隷」であることをやめ、自分自身の脳の、最高のトレーナーになるための、最初の、そして最も重要な最初の一歩だからです。
ADHDの僕らは、今日お伝えした悪いドーパミンに非常に弱いです。僕もリストのうちの大部分にハマった経験がありますし、酒やタバコの中毒から抜け出すのにも非常に苦労をしました。依存症、中毒になるリスクに関しても、ADHDの人は一般の人と比べて、3~5倍ほどのリスクがあるようです。脳の仕組みとして、ADHDは悪いドーパミンに極めて弱いこと。それによって人生を台無しにしてしまうリスクがあるということをしっかり認識しないといけません。そして、悪いドーパミンを良いドーパミンに置き換える。小さな置き換えから、大きな置き換えまで、悪いドーパミンをできるだけ減らし、良いドーパミンを増やす生活習慣を作って行きたいものです。
【ADHDとドーパミン】シリーズの最初の記事はこちら
【ADHDとドーパミン】シリーズはこちら
①ADHDの脳の「支配者」
②短期的な快楽に飲み込まれる
③運動という名の「脳のお薬」
④「社会的ドーパミン」を得よう!
⑤ドーパミンと休息
⑥ドーパミンデトックス
⑦ドーパミン中毒と隠れた原因
⑧最終的なドーパミンとの付き合い方
【ADHD離婚からの再生】シリーズ
※過去のシリーズですがドーパミンに深く関係しています。
①ADHDの禁酒と禁煙
②禁酒後の新しい世界
③「動」と「静」で脳を整える
④運動は「最高の処方箋」
⑤習慣化できますか?
⑥「失敗だらけの過去」の意味