
ADHDの脳の「支配者」
【ADHDとドーパミン①】
「やらなきゃいけない」
そう頭では分かっているのに。
体はまるで動かない。
目の前には、散らかった部屋。
洗うべき、食器の山。
しかし、僕の脳は、その現実から目をそらし、気づけば、スマホを手に取っている。 そして思うのです。
「今日も最初の一歩が重いなぁ」と。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日から、ADHDの僕らの人生のほぼ全てを支配している脳内の「王様」。 その「ドーパミン」の正体について、探求していく、新しいシリーズを始めます。
ADHDについて、少し学んだことがある人なら、一度は、聞いたことがあるかもしれません。 「ADHDの脳は、ドーパミンが足りないんだ」と。
その通りです。 僕らの脳は、脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」が、十分に機能していないと言われています。
ドーパミンは、僕らの「やる気」や「快感」を生み出す、非常に重要なガソリンです。 そのガソリンが、不足しているか、あるいは、うまくエンジンに伝わっていない。 その結果、僕らの脳は、常に「飢餓感」を感じてしまうのです。
全ての「謎」は、このたった一つの「渇き」から始まると言っても過言では無いのかもしれません。この「ドーパミンが十分に機能していない」という、たった一つの事実こそが、これまで抱えてきた、全ての「長所」と「短所」を生み出す全ての「源泉」なのです。 この「連鎖法則」を理解することは、人生の「なぜ?」を解き明かすのに大きく役立ちます。
ADHDの脳は、常に「飢餓感」を感じています。 「もっと、ドーパミンを!」「もっと、強い刺激を!」と。 その脳の切実な「叫び」が、全ての行動を連鎖反応のように、突き動かしているのです。順を追って説明します。
①ADHDの脳はドーパミンが出にくい。
他の人が「楽しい」と感じることでも、ADHDの脳は「刺激が足りない」と感じてしまう。
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② 常に「刺激」を探し始める。
思いついたらすぐ動く(衝動性)。
興味のない話は、聞けなくなる(注意散漫)。
新しいこと、スリリングなことに惹きつけられる(新規追求)。
ADHDにとって退屈は、普通の人の退屈じゃない。
それは苦痛にすら感じる。(じっとしていられない。待つのが苦手)
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③ 「集中力」に極端なムラが生まれる。
興味があることを見つけた時。 「これだ!」と、ドーパミンを一気に放出する。そして「過集中」状態に入る。
しかし、興味がないことに対しては、ドーパミンが出ない。だから、集中できない。 「集中できる時」と「できない時」の激しい差は、「やる気」の問題ではなく、ドーパミンの出方の差だったのです。
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④ 「計画」や「整理」が苦手になる。
ドーパミンが少ないと、脳の「司令塔(前頭前野)」の働きが鈍くなる。 その結果、やるべきことの「優先順位」がつけられない。 「締め切り」という強烈な刺激がないと動けない。 「あとでやろう」が、永遠に「やらないまま」になる。
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⑤ 「感情」も波打つ。
ドーパミンの乱れは感情の安定に関わる、他の神経伝達物質にも影響を与えます。 そのため、落ち込みやすく、イライラしやすくなる。 疲れやすく、気持ちの切り替えが、難しくなることもある。 感情もまた「刺激」に強く反応しやすくなってしまうのです。
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⑥ 「環境」によって別人になる。
フィードバックが早くて、刺激がある環境では水を得た魚のように活躍できる。 しかし、単調で静かな環境では、パフォーマンスが下がってしまう。 それは外からの「刺激」がADHDの脳にとって、ドーパミンの「代わり」になってくれるからです。 「場所や、人によって、別人みたいに変わるね」と、言われるのはこのためなのです。
このシリーズを通して、僕があなたと一緒に探求したいこと。 それは、この気まぐれでパワフルな僕らの脳の「王様」の最高の「理解者」になり、その力をどうすれば僕らの人生の味方にできるのかということです。
僕らは、ドーパミンを「支配」することはできない。 しかし、その「性格」と「好み」を、深く理解し、最高の「ご褒美」を最高のタイミングで与えることはできる。
もう自分の脳の「奴隷」ではない。 今日から、自分自身の脳の、最高の「トレーナー」になるのです。 希望に満ちた物語が今ここから始まります。
【ADHDとドーパミン】シリーズはこちら
①ADHDの脳の「支配者」
②短期的な快楽に飲み込まれる
③運動という名の「脳のお薬」
④「社会的ドーパミン」を得よう!
⑤ドーパミンと休息
⑥ドーパミンデトックス
⑦ドーパミン中毒と隠れた原因
⑧最終的なドーパミンとの付き合い方
【ADHD離婚からの再生】シリーズ
※過去のシリーズですがドーパミンに深く関係しています。
①ADHDの禁酒と禁煙
②禁酒後の新しい世界
③「動」と「静」で脳を整える
④運動は「最高の処方箋」
⑤習慣化できますか?
⑥「失敗だらけの過去」の意味