凸凹ADHD

 

「察してちゃん」という名のサイレントテロリスト
【ADHDと結婚⑥】

「何、怒ってるの?」

その一言が、地雷だった。 元妻は何も言わない。


ただ冷たい沈黙と、凍りついた表情で、僕を静かに罰するのだ。

部屋の空気は、鉛のように、重い。 僕の脳は、パニック状態。
「僕が、何か悪いことをしたのか?」
「いつ?どこで?何を間違えた?」

頭の中で、無数の「容疑者」が走り回る。
はたして、何の罪が掛けられているのか?

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、ADHD当事者の僕が、元妻からの離婚から学んだパートナーとして、絶対に選んではいけない「人物像」、その第2弾をお届けします。それは、僕の心を、静かに、確実に殺していく、今思えば「察してちゃん」という名の、サイレントテロリストです。

まず、何よりも先に、知っておいてほしいことがあります。 ADHDの人が、相手の、その言葉にならない「本音」を察することができないのは、決して、「愛情」が足りないからではありません。 それは、脳の「OS」が、「言葉」という、具体的な情報を、何よりも、優先して処理するようにできているからです。

ADHDの脳にとって、言葉のない空間はただの「無」です。 そこに、隠された「意味」や「感情」を、読み解く機能は、残念ながら標準装備されていません。というのは少し言い過ぎかもしれませんが、それでもやはり期待してはいけません。

しかし、元妻の「察してちゃん」は、僕にその能力を要求しました。
「本当に、愛しているなら、言わなくても分かるはずだ」と。
それは、僕にとって、あまりにも「無理ゲー」でした。

「ちゃんと言葉にして言ってくれないとわからないよ。」とADHDの自覚が無かった自分が何度も彼女に訴えていたことを思い出します。

あの頃の僕は、まさに、この出口のないゲームの、真っ只中にいました。 元妻は、僕にとって最高の「謎」でした。 彼女のその突然の「沈黙」は、僕の脳を完全にパニックにさせました。

僕は彼女の機嫌を取り戻すために必死でした。 心当たりもないのに謝り続ける。 ピエロのように道化を演じて笑わせようとする。 しかし、その僕の、全ての努力は、彼女の固く閉ざされた「心の壁」の前で空回りするだけ。

そして、僕はいつしか彼女の「顔色」をうかがうことだけが、生きる目的になっていました。 僕自身の「感情」は完全に麻痺していたのです。

では、ADHDの当事者は、どんな人と一緒になれば、この悲しいすれ違いを、乗り越えることができるのでしょうか。

それは、僕らに、お察し能力テストを仕掛けてくる人ではありません。お察し能力が高いですよマウントを取ってくる人でもありません。 空気読む能力高いですよマウントを取ってくる人もダメですね。

いっしょになるべき人は自分の心を、正直な「言葉」で僕らに伝えてくれる人です。

もし、ADHDのあなたが、今誰かと共に人生を歩もうとしているのなら。
どうか見極めてください。

その人は、あなたに「沈黙」という名の謎を与えますか?
それとも、「言葉」という名の地図を与えてくれますか?

ADHDの僕らに、本当に必要なのは、僕らの心を試す人ではありません。 僕らに、本当に必要なのは、僕らの「不器用さ」ごと、信じ愛してくれる人なのです。

僕らは「察してちゃん」の心を読み解く、探偵になるために生まれてきたのではありません。 多少不器用だけれども、なんのかんの愛おしい自分自信の「物語」を生きるために生まれてきたのですから。

【ADHDと結婚】シリーズの最初の記事はこちら

【ADHDと結婚シリーズ】
①結婚できますか?
②なぜ些細なことから喧嘩になる?
③ADHDだから仕方ないじゃないか
④ありがとう。でも、僕は子供じゃない。
⑤こんな人とは結婚しないで
⑥「察してちゃん」という名のサイレントテロリスト
⑦ADHDはどんな人と結婚する?

【ADHD離婚シリーズ】過去の自分と向き合った離婚シリーズはこちら
①一つのことにしか意識を向けられない不器用な真実
②「寄り添ってほしい」と言われた僕が、途方に暮れるしかなかった理由
③僕の「得意なこと」は、なぜ努力として認められなかったのか。
④「それくらい自分で考えて」が、僕には一番難しい呪文だった。
⑤なぜ僕は「名もなき家事」が全く見えなかったのか。
⑥なぜ僕らは、「二人でいる時」が一番孤独だったのか。
⑦妻のイライラから「逃げる」以外の選択肢を、なぜ持てなかったのか。
⑧なぜ僕は、妻からの「パシリありがとう」に喜んでしまったのか。

 

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