凸凹ADHD

 

デリカシーがないって言われない?
【もしかして、ADHD⑥】

 

「デコさんは、いつも、正直で良いよね」

そんな風に言われたことはないだろうか。 僕は、お世辞やその場しのぎの嘘がなかなか言えません。さらには、ついつい正直に言わなくても良いことまで言ってしまいます。その「正直さ」が、周りの人々から信頼を得ていることにはとても嬉しく思っています。

しかし、その一方で。 こんな、苦い経験に、悩まされてはいませんか?
良かれと思って、口にした「本当のこと」が、なぜか、場の空気を、凍りつかせてしまう。 相手を、励ますつもりで言った、客観的な「事実」が、相手の心を、深く、傷つけてしまう。 そして、周りから、こう囁かれるのです。 「デコさんは、デリカシーがない」と。

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。気を付けていても、ついついデリカシーのないことを言ってしまいます。しかしながら、今日は、その素晴らしい「正直さ」にも着目しつつ、不器用な「ストレートさ」が、どのようにして同じ一つの「性質」から生まれるのかについて、お話しします。

この謎を解く鍵は、僕らの脳が、心で思ったことを、言葉として「出力」する時の仕組みにあります。

多くの人の脳には、頭に浮かんだ「本音」を、相手との関係性や、その場の空気に合わせて、最適な言葉に変換するための、非常に高性能な「翻訳ソフト」が搭載されています。 しかし、ADHDの人の脳は、その「翻訳ソフト」を、バイパスしてしまっているらしいのです。

ADHDの人の脳は、「真実」や「論理的な正しさ」を、何よりも優先します。 そのため、頭に浮かんだ「事実」が、相手の感情を処理するフィルターを通らずに、そのまま、「ダイレクト出力」で、口から飛び出してしまう。

この仕組みについてもう少し詳しく説明します。
人の脳は、ざっくり言うと次のような流れで発言や行動を決定します:

  1. 思考や感情が生まれる
    → 「本音」や「事実」にあたる部分です。

  2. それを社会的に適切な形に整える
    → ここが「翻訳ソフト」に相当します。相手の立場や状況、空気を読む処理を行い、「これは言ってもいいか?」「どう言えば伝わるか?」を判断します。

  3. 実際に発言・行動に移す

ADHDの人は2番が弱いようです。優先順位を付けて考えるのが苦手なことに
も似ていますね。

分かりやすい例としては、

定型発達の人
「Aさん、元気なさそう」

フィルター処理(軽く触れる程度にし他方が良い)

「大丈夫?なんか疲れてる?」

ADHDの人
「Aさん、元気なさそう」

フィルター処理(フィルターが弱い or スキップ)

「顔色悪いね。寝てないの?」

悪気はないのですが、相手がどう感じるかよりも、見えた事実を正確に伝えることを優先してしまうのが特徴です。

ADHDの人としては、ただただ、真実を伝えようとしているだけ。 良かれと思って放った言葉です。しかし、そのあまりにも、まっすぐすぎる言葉が、時に相手の柔らかい心を傷つけてしまうことがあるのです。

そういうことで、僕は昔から精神的にタフな人が友達に多かったんだということに気が付きました。たぶん、そういう人とじゃないと僕がうまくやっていけなかったんだと思います。小さいことにくよくよする人だったり。細かいことを気にする人。意思表示が弱い人。僕はそういう人を無意識に避けていたんだろうと今になって思います。

時に、人間関係では不器用な思いもしてきました。「空気が読めない人、思いやりが無い人、冷たい人」と誤解されたこともたくさんあります。

もし、あなたがこの話に心当たりがあるのなら。 あなたも、もしかするとADHDの特性があるかもしれません。その上で、ストレートすぎる「言葉」は、ただの「欠点」ではありません。 それは、どんな状況でも自分にそして相手に嘘をつくことができないというかけがえのない「誠実さ」の証明でもあるわけです。

「空気が読めない人、冷たい人、デリカシーが無い人」と言われたことはあれど、「正直さ」や「誠実さ」によって得て来た信頼の数と比べたら、それは微々たるものに感じます。つまり、僕はこのADHDの性質から、ネガティブな側面よりも圧倒的にたくさんのポジティブな側面を得て来たと考えています。前向きに、自分のADHDの性質について知ること。それの特徴を把握すること。 それこそが、人生をより深く、理解するためとても重要なカギになるはずです。ADHDを学び、自分自信を理解し、自分自信のコントロールの仕方をマスターしていきましょう。

【もしかして、ADHD】シリーズの最初の記事はこちら

【もしかして、ADHD】シリーズ
①何かに没頭してしまうことって無い?
②衝動性はただの欠点なのでしょうか?
③A→B→C→Dと進められなくない?
④めっちゃポジティブだねとか言われない?
⑤決まりきったルールが我慢ならなくない?
⑥デリカシーがないって言われない?
⑦多動はただの欠点なのでしょうか?

ADHDの学びをさらに深めるための記事がこちらです。
【凸凹ADHD】シリーズ
①あなたの「弱み」は、裏返せば「武器」になる。
②「先延ばし癖」という絶望が、最強の「集中力」に変わる瞬間
③なぜ僕らは「人の痛み」に、誰より敏感なのか
④「退屈な時間」に、1秒も耐えられない理由
⑤「時間」にルーズなのは、脳が「未来」を旅しているからかもしれない
⑥「三日坊主」という絶望が、「リーダーシップ」に変わる日
⑦なぜ僕らは「グループ会話」が苦手で、「1対1」が得意なのか
⑧なぜ僕らの部屋は片付かず、頭の中は新しいことで溢れているのか
⑨なぜ僕らは、絶望の数だけ「最強」になれるのか

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