
常識や普通と比べるのはやめて
【ADHDに伝える②】
「どうして、普通にできないの?」
「周りの人は、みんなちゃんとやっているよ」
ADHDパートナーの方は、悪気なくそんな言葉を、ADHDの彼に、かけてしまったことがあるかもしれません。しかしこんな声かけをしていたとしたら要注意ですよ。
決して彼を傷つけるためではないと思います。 どうして彼だけが、こんなにも苦労しているのだろうと、純粋な「心配」と「疑問」から生まれた言葉なのだと思います。だけど、これはADHDの当事者にはすごく嫌になる声かけなのです。
その言葉を聞いた瞬間。 心を固く閉ざしたい気持ち、または反発したい気持ちになります。二人の間には、冷たく、重い空気が、流れてしまうことでしょう。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、僕らADHD当事者が、パートナーから、言われてとても不愉快になる言葉。 そして、その代わりに、僕らが、本当に言ってほしい「魔法の言葉」について、お話しします。
まず、何よりも先に、知っておいてほしいことがあります。 僕らにとって、「普通」や「常識」という言葉は、ただの「平均」を意味する言葉ではありません。 それは、僕らのこれまでの人生の全ての「敗北」を思い出させる、痛みを伴う「言葉」なのです。
「常識がないの?」これは元嫁に言われたこの言葉ですが、いまだにそれを思い出すだけで苛立ちが込み上げます。過去を紐解くとADHDの僕らは、子供の頃から、ずっーーと、戦ってきました。「普通」という、あまりにも高く、そして、透明な壁と。
朝は決められた時間に起きるのが、「普通」。
忘れ物をしないのが、「普通」。
時間を守るのが、「普通」。
電気は消すのが、「普通」。
ドアは閉めるのが、「普通」。
人の話を、最後まで、静かに聞けるのが、「普通」。
周りに合わせるのが、「普通」。
その数え切れないほどの「普通」に、ADHDの僕らは適応しようとしてきました。教えられ、説明され、強制され。そしてそれにことごとく失敗をしてきているのです。 そのたびに、周りから掛けられてきた言葉、それが「どうして、普通にできないの?」「周りの人は、みんなちゃんとやっているよ」という言葉なのです。その度に、ADHDの僕らの心には、「自分は劣っている」という、小さな傷がたくさん刻み込まれてきました。
だから、一番、信頼しているパートナーから、「普通はこうだよ」と言われると。一番掛けて欲しくない言葉を掛けられている。つまり自分のことを全然わかってくれていない。そういう解釈になってしまい、悲しみとその反動で苛立ちが込み上げるのだと思います。
ではどうすれば、僕らは、この悲しい「すれ違い」の壁を、乗り越えることができるのでしょうか。
大切なのは、ADHDの彼を、あなたの世界の「普通」に、引き込もうとすることでは、ありません。 その代わりに、あなたが、ADHDの彼のユニークで、不思議な「世界」を知ることです。
今日、あなたにお渡ししたい、たった一つの「会話の鍵」。 それは、他者との「比較」をやめて、「好奇心」を持つということです。
例えば、彼が、一つのことに集中できず、次から次へと、新しいことを、始めてしまう時。
この伝え方は、彼の脳をポジティブな方向へと動かします。 なぜなら、これは彼の「欠点」を指摘するのではなく、彼の才能そのものに興味があるよという、最高の「メッセージ」として、認識されるからです。
あなたが、今日から始めるべきこと。 それは、彼を「普通」の枠に押し込めることではありません。普通はこうだから、常識はこうだからと、比較するのはやめてあげてください。これができれば今日伝えたいことはほとんど完成です。
あとはプラスアルファで、もし彼の思考を知りたいのであれば、好奇心を持って彼の持つ新しい興味について聞いてみてください。そうすれば、喜んで話してくれるでしょう。
ADHDのパートナーの人は、ADHDの彼の「良き仲間」であり、「良き理解者」になってあげてください。決して、ADHDの彼より上の立場から指示したり、世間や自分の常識や普通に彼を合わせようとしないください。
このシリーズの第一話はこちら
【ADHDに伝える】シリーズ
①ADHDが本当に欲しい言葉~信頼の言葉~
②常識や普通と比べるのはやめて
③ADHDのエンジンの掛け方!よーいドン!
④「また」「いつも」「どうせ」って言わないで
⑤忘れた理由?それは聞かないで
以前にも、ADHDパートナーの方に向けてのシリーズを書いています。
ADHDパートナーの人は是非こちらも読んでみてください~^^
①なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
②なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
③なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
④なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
⑤彼との関係に絶望しているあなたへ
⑥彼を「変える」のを諦めた日に全てが始まった
⑦「カサンドラ症候群」からあなたを救いたい