凸凹ADHD

 

「なぜ」ではなく「何」で話そう
【ADHD人間関係②】

 

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。前回の記事で、僕らと僕らの大切な人との間で起こるすれ違いは、愛情の問題ではなく、お互いの「脳の仕組み」が違うことから生まれる、というお話をしました。

「なるほど、仕組みが違うのか」 そう頭で理解できても、現実のコミュニケーションは待ってくれません。

相手:「ゴミ出し、忘れてるよ」
あなた:「あ、ごめん!昨日、急な仕事が入って、その対応で頭がいっぱいで…」
相手:「でも、朝、時間あったでしょ?」
あなた:「いや、朝は別のことを考えてて、それで…」

この会話、身に覚えはありませんか? 相手が知りたいのは、たった一つ。「ゴミがどうなるのか」です。 しかし、ADHDの人はつい、忘れてしまった「理由(なぜ)」を一生懸命に説明しようとしてしまいます。

ADHD僕らにとって、この「理由」の説明は、悪気がないことを示すための言葉です。 しかし、相手にとっては、それは「言い訳」や「話のすり替え」に聞こえてしまうことが、あまりにも多いのです。僕も「言い訳は良いから。」と言われたことは数知れず。

このすれ違いこそ、僕らが人間関係で消耗する、最大の原因の一つかもしれません。

僕らの脳は、一つのことから次々と連想を広げる「拡散的思考」が得意です。「ゴミ出しを忘れた」という一つの事実から、「昨日の仕事のこと」「朝考えていたこと」「そもそもゴミ出しのシステムが…」と、思考があちこちにジャンプしてしまう。僕らは、その思考のプロセスを正直に話しているだけなのです。

しかし、相手が求めているコミュニケーションは、もっと直線的です。 【問題発生】→【原因究明】→【解決策の提示】 相手は、僕らがステップ3の「解決策」を提示してくれるのを待っているのに、僕らはステップ2の「原因究明(という名の理由説明)」で、迷子になってしまうのです。

コミュニケーションを「翻訳」する、最初のステップ

このすれ違いを防ぐための、最もシンプルで強力な方法。 それは、会話の焦点を「なぜ(Why)」から「何を(What)」に、意識的に切り替えることです。

何かを指摘された時、僕らが最初に言うべきことは、理由ではありません。 「次、どうするか」という具体的な行動です。

<Before>
相手:「ゴミ出し、忘れてるよ」
あなた:「ごめん!昨日の夜、急な仕事が入っちゃって、それで頭がいっぱいで…」

<After>
相手:「ゴミ出し、忘れてるよ」
あなた:「あ、本当だ、ごめん!今すぐ持っていくね。

たったこれだけです。 理由の説明を、一度、完全に省略するのです。 そして、相手が求めている「解決策(What)」を、最初に提示する。

もし、相手が理由を聞いてきたら、その時に初めて、手短に話せばいいのです。 「ごめんごめん、昨日ちょっと立て込んでて、すっかり抜けちゃってた」と。

この「Whatを先に言う」というルールは、僕らにとっては少し不自然に感じるかもしれません。 しかし、これは相手の脳の仕組みに合わせた、最も効果的な「翻訳」なのです。

これにより、相手は「問題を解決しようとしてくれている」と感じ、安心感を得られます。 そして僕らは、長くて辛い「理由説明」の時間から解放され、消耗を防ぐことができるのです。

これは、あなたが自分を殺して相手に合わせる、ということではありません。 お互いが心地よい関係を築くために、僕らが身につけることができる、最高の「コミュニケーション術」なのです。

次の記事では、この「Whatで話す」を、さらに円滑にするための具体的なフレーズについて、考えていきたいと思います。

【ADHD人間関係シリーズ】
①僕らの「当たり前」は相手の「当たり前」ではない
②「なぜ」ではなく「何」で話そう
③クッション言葉はマジで優秀!
④自分の「トリセツ」をパートナーに渡そう
⑤大切なパートナーの「トリセツ」も作ろう。
⑥パートナーの「本音」を聞くのが怖い
⑦彼女とのトリセツ会議
⑧パートナーにも指摘された「ごめん」
⑨「ありがとう」に心を乗せる方法
⑩ついに完成。パートナーの「トリセツ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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