
僕らの「当たり前」は相手の「当たり前」ではない
【ADHD人間関係①】
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。前回までの「ADHD目標と計画」シリーズを通して、ADHDの僕らが自分だけのやり方を作り上げる方法をお伝えしました。 日々のタスクをこなし、自分を分析し、目的地を見据える。自分自身をうまく扱うための、確かな手応えを感じ始めたはずです。
しかし、僕らの人生は自分一人では完結しません。 家族、パートナー、友人、同僚といった、自分とは違うやり方を持つ他者と関わった時、新たな根深い問題が顔を出します。
「言ったのに、なんで覚えてないの?」
「どうして、そんなに衝動的なの?」
「私の気持ち、本当にわかってる?」
そして、僕らの心に渦巻く、あの苦しい一言。
「どうして、わかってくれないの?」
これは、愛情や思いやりの問題ではありません。 僕らが向き合うべきだったのは、もっと根本的な、お互いの「脳の仕組み」が違うという、ただそれだけの事実だったのかもしれません。
僕らは、無意識のうちに「自分と同じように、相手も世界を見ているはずだ」と信じています。 しかし、ADHDの僕らの脳と、定型発達の人の脳とでは、情報の処理方法や物事の感じ方が、根本的に違うのです。僕らの「当たり前」は相手の「当たり前」ではないということを理解した方が良いんです。
どちらが優れているという話ではありません。ただ、違うのです。 この「違い」を理解しないままでは、お互いが良かれと思ってやったことさえ、すれ違いの原因になってしまいます。よくあるその違いの例を挙げて見たいと思います。
「約束」の重さ
ADHDである僕らにとって「口約束」は、その瞬間の興味や善意の表明であって、記憶の棚からすぐにこぼれ落ちてしまうデータです。しかし、相手にとっては、それはしっかりと記録された、実行されるべき契約書かもしれません。 僕らに悪気はなくても、相手は「約束を軽んじられた」と感じてしまいます。※口約束に注意!
「時間」の流れ方
ADHDである僕らにとって「あとでやる」は、数分後かもしれないし、数日後かもしれない、非常に流動的な概念です。しかし、相手にとっては「今日中、あるいは可及的速やかに」という意味かもしれません。 僕らがのんびりしているつもりはなくても、相手は「後回しにされた」と感じてしまいます。※あとでやるに注意!
「感情」の表現
ADHDである僕らにとって、興味があることへの熱弁や、不正義への怒りは、純粋なエネルギーの発露です。しかし、その強すぎる出力は、相手にとって「攻撃されている」「威圧されている」と感じさせてしまうことがあります。 僕らが情熱的になっているだけでも、相手は「心を閉ざされてしまった」と感じてしまうのです。※熱が入っている時に注意!
なので、まずは「翻訳」が必要になります。このすれ違いの連鎖を断ち切るための、最初のステップ。 それは、相手を変えようとすることでも、自分を責めることでもありません。お互いの「脳の特性」を、冷静に理解しようとすることです。
「なんで覚えてないの?」と責める代わりに、「この人の脳は、口約束を記憶するのが苦手な特性があるんだな。どうすれば記録に残るかな?」と考えてみる。 「どうして急かすの?」と苛立つ代わりに、「この人の脳は、タスクが完了しないと安心できない特性があるんだな。今の状況を伝えてみよう」と考えてみる。
これは、人間関係を諦めることではありません。 むしろ、愛情や信頼といった、本当に大切なものを守るための、最も効果的なアプローチなのです。
この新シリーズでは、この「仕組みの違い」を理解し、お互いの言葉を「翻訳」し合うための、具体的な方法について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 もう、「わかってくれない」と一人で嘆くのは、終わりにしましょう。
【もしかして、ADHD】シリーズ
①僕らの「当たり前」は相手の「当たり前」ではない
②衝動性はただの欠点なのでしょうか?
③点と点を結ぶのが得意?
④めっちゃポジティブだねとか言われない?
⑤決まりきったルールが我慢ならなくない?
【ADHD人間関係シリーズ】
①僕らの「当たり前」は相手の「当たり前」ではない
②「なぜ」ではなく「何」で話そう
③クッション言葉はマジで優秀!
④自分の「トリセツ」をパートナーに渡そう
⑤大切なパートナーの「トリセツ」も作ろう。
⑥パートナーの「本音」を聞くのが怖い
⑦彼女とのトリセツ会議
⑧パートナーにも指摘された「ごめん」
⑨「ありがとう」に心を乗せる方法
⑩ついに完成。パートナーの「トリセツ」