凸凹ADHD

 

なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
【ADHDパートナー④】

 

 

「どうして、いつも、そうなの?」
「もう、少しいい加減にして」
「また、忘れたの?」

あなたは、ただ困っている事実を伝えただけ。 ほんの少しだけ、注意をしてほしかっただけ。 それなのに、その瞬間、彼の表情は、一変する。

まるで、人格を全否定されたかのように、激しい言葉で、あなたを攻撃する。 あるいは、固く心を閉ざし冷たい沈黙の壁を作り上げてしまう。

あなたは、その、あまりにも過剰な反応に、ただ呆然と立ち尽くす。

「なぜ?」「どうして?」

何が、彼の「地雷」だったのか全く分からない。 そして、心の中で、こうつぶやくのです。 「もう、この人のこと、何も分からない…」と。。。

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。

今日は、ADHDのパートナーが持つ、この最も不可解で、そして、最もあなたの心を傷つけるであろう「感情の爆発」。
その引き金となる、「拒絶されることへの過敏性(Rejection Sensitive Dysphoria, RSD)」という、脳の仕組みについてお話しします。

彼の脳は、あなたの「言葉」を、誤変換している

まず、何よりも先に、知っておいてほしいことがあります。 彼が、あなたの言葉に、過剰に反応し、怒りを爆発させている時。 彼の脳は、あなたの言葉を、そのままの意味では受け取れていません。 彼の脳に搭載された、非常に敏感な「警報システム」が、あなたの言葉を、全く別の、恐ろしいメッセージに「誤変換」してしまっているのです。

これは決して、あなたのせいではありません。 彼の「脳の仕様」が、引き起こしている、悲しいすれ違いなのです。 具体的に、どのような「誤変換」が起きているのか。いくつかの、よくある事例を見ていきましょう。

「でも、そんな言葉、誰が言われたって傷つくじゃない」

もちろん、その通りです。 「どうして、いつも、そうなの?」という言葉は、誰にとっても、気持ちの良いものではありません。 そして、「拒絶されること」に敏感な人は、ADHDでない人の中にもたくさんいます。

ここでの、最も重要な違いは、「痛みの深さ」と「ブレーキの有無」です。

多くの人の脳は、その言葉を聞いて、「ああ、また責められたな」と、イラっとしたり、少し落ち込んだりするかもしれません。しかし、多くの場合、それは「自分の、その行動に対する一時的な批判」として、処理されます。

しかし、RSD傾向のあるADHDの脳では、同じ言葉が、「君という人間は、根本的に、欠陥がある」という、人格全体への、致命的な攻撃として、誤って受信されてしまうのです。 そして、その、耐え難いほどの「痛み」に対して、ADHDの人の脳の「司令塔(前頭前野)」は、うまく「感情のブレーキ」をかけることができません。 その結果、自分でも制御不能な「感情の波」に、自分自身が飲み込まれてしまうのです。

パートナーが、傷ついてしまう「言葉のすれ違い」事例集

  • Case 1:ただ、理由を聞いただけなのに…

    • あなたが言った言葉: 「どうして、出しっぱなしにしたの?」

    • 彼の脳が、誤変換したメッセージ: 「お前は、また失敗した。本当に、ダメな人間だな」

  • Case 2:優しく、提案しただけなのに…

    • あなたが言った言葉: 「今度は、もう少し、早く準備してみない?」

    • 彼の脳が、誤変換したメッセージ: 「お前は、いつも、みんなに迷惑をかけている。本当に、足手まといだ」

  • Case 3:ただ、疲れた顔を、見せただけなのに…

    • あなたの行動: (仕事で疲れて、ため息をつく。少し、無表情になる)

    • 彼の脳が、誤変換したメッセージ: 「俺のせいで、君は、不幸なんだ。俺と一緒にいると、疲れるんだ」

  • Case 4:自分の気持ちを、伝えただけなのに…

    • あなたが言った言葉: 「今日は、あまり、そういう気分じゃないな」

    • 彼の脳が、誤変換したメッセージ: 「お前の提案は、つまらない。お前という人間は、退屈だ」

  • Case 5:友達を、褒めただけなのに…

    • あなたが言った言葉: 「〇〇さんの旦那さんって、いつも優しくて、素敵だね」

    • 彼の脳が、誤変換したメッセージ: 「それに比べて、お前は、なんてダメな夫なんだ」

  • Case 6:趣味について、アドバイスしただけなのに…

    • あなたが言った言葉: 「そのやり方より、こっちの方が、効率的じゃないかな?」

    • 彼の脳が、誤変換したメッセージ: 「お前のやり方は、全てが、根本的に間違っている」

なぜ、彼は、そこまで深く傷ついてしまうのか

この、あまりにも過敏な反応は、彼の脳が、「社会的拒絶」を、命の危険と同じレベルの「痛み」として、感じてしまうからです。 その、耐え難い痛みから、自分自身を守るために、彼の脳は、パニックを起こし、「怒り」や「沈黙」という、極端な防衛手段に訴えてしまうのです。

あなたが、これまで何度も経験してきた、あの心が引き裂かれるような、彼の「感情の爆発」。 それは、決して、あなたのせいではありませんでした。

彼の脳が、「拒絶される」という、見えない恐怖と、たった一人で、必死に、戦っていただけなのです。

もちろん、だからといって、彼の、あなたを傷つける言動が許されるわけでは決してありません。 しかし、この、彼の脳内で起きている「悲しい誤変換」の仕組みを知ることは、あなた自身を、不必要な罪悪感から、解放してくれます。

そして、それは、二人がこの「見えない地雷」を、一緒に乗り越えていくための、最初のそして最も重要な「地図」になるはずです。

ADHDパートナーの方へ

①なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
②なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
③なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
④なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
⑤彼との関係に絶望しているあなたへ
⑥彼を「変える」のを諦めた日に全てが始まった
⑦「カサンドラ症候群」からあなたを救いたい

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