
なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
【ADHDパートナー③】
あなたは、ただ、彼とほんの少しの時間でいいから繋がりたい。 二人だけの穏やかな時間を過ごしたい。 そう願っているだけなのに。
彼の目は、常にスマホの画面や、仕事のPC、あるいは趣味の道具に釘付けになっている。 あなたが勇気を出して「ねえ、少しだけ、二人の時間を作れないかな?」と提案しても、彼は、どこか上の空で、「うん、また今度ね」と、繰り返すばかり。
その、見えない壁を前に、あなたは、一人途方に暮れる。
「私よりも、趣味の方が、大切なんだ…」
「もう、彼は、私との未来を、考えていないのかもしれない」
その、冷たい不安が、あなたの心を、少しずつ蝕んでいく。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、ADHDのパートナーが、時に驚くほどの集中力で、自分の世界に没頭してしまう、その「脳の仕組み」と、その「壁」を、壊すのではなく、一緒に「乗りこなす」ための、具体的な戦略についてお話しします。
彼の脳は、あなたを「拒絶」しているわけではない
まず、何よりも先に知っておいてほしいことがあります。 彼が、自分の趣味や仕事に没頭している時、彼の脳は、あなたを、意図的に、無視しているのではありません。 むしろ、彼の脳は、その瞬間、あなたの存在を、認識することすらできていないのです。
これは、ADHDの人の脳の注意が「スポットライト」である、という特性に起因します。 彼が、自分の好きなことに向き合っている時、彼の脳のスポットライトは、その対象に、全ての光を、一点集中で注いでいます。 それは、僕らが「過集中(ハイパーフォーカス)」と呼ぶ、驚異的な集中状態です。
そして、その強烈な光が当たっている時、スポットライトの外にあるものは、彼にとって完全な「暗闇」になります。 その暗闇の中に、あなたが、一人、寂しそうに立っていることに、彼は気づくことすらできないのです。
なぜ、彼は「指摘」に、強く反発するのか
そして、あなたが、そんな彼にい「もっと、二人の時間を大切にしてほし」と伝えた時、彼が、時に、不機嫌になったり、頑なに、自分を正当化しようとするかもしれません。
彼が、仕事や趣味に「過集中」している時、彼の脳は、大量のドーパミンを放出し、最高のパフォーマンスを発揮しています。 それは、彼にとって、自分が「有能である」と感じられる、非常に重要な「成功体験」の瞬間なのです。
その、最高の瞬間に、あなたの、たとえ優しさからくる言葉であっても、「もっと、こうしてほしい」という指摘は、彼の脳には、「君の、今の状態は、間違っている」という、強烈な「否定」のメッセージとして、届いてしまうことがあります。 それは、彼の自己肯定感を根底から揺るがす、あまりにも強すぎる「攻撃」に感じられてしまうのです。
では、どうすれば、この、絶望的な状況を、変えることができるのでしょうか。 大切なのは、彼の「壁」を、力ずくで壊そうとすることではありません。 あなたが、彼が夢中になっている「ゲーム」の、最高の「チームメイト」として、その世界に、参加してしまうのです。
そのための、最も重要で、たった一つの戦略。 それは、「二人の時間」を、新しい「ミッション」として、提案することです。
「二人の時間を作ってほしい」という、曖昧な要求は、彼の脳には、うまく響きません。 その代わりに、具体的で、少しだけワクワクするような「ミッション」として、提案するのです。 「来週の土曜の夜は、二人で、世界一美味しいパスタを作るっていう『ミッション』に、挑戦しない?最高の材料は、私が、探しておくから」
この提案は、彼の「新規追求性」を刺激し、「退屈な義務」を、「楽しい冒険」へと、変えてくれます。
そして、この戦略を、さらに成功させるための、2つのポイントがあります。
①:まず、彼の「世界」に、敬意を払う ミッションを提案する前に、まず、彼が没頭しているものに対して、純粋な好奇心を示してみてください。 「すごい集中力だね。何が、そんなに、あなたを夢中にさせるの?」 この一言は、彼にとって、「僕の世界を、理解しようとしてくれている」という、最高の「承認」のメッセージになり、彼の心の扉を、少しだけ、開けてくれます。
②:「予約」という名の、優しい強制力を使う そして、ミッションの日時が決まったら、それを、二人の共有カレンダーに、絶対に動かせない「予約」として、入れてしまうのです。 ADHDの脳は、自分の中から「やる気」を生み出すのは苦手ですが、「外部からの、明確な締め切り」には、驚くほど、従順に従うことができます。
あなたが、今感じている、そのどうしようもない孤独感。 それは、決してあなたのせいではありません。
彼の脳は、ただ、一つのことにしか、ピントを合わせられない、不器用で、しかし、非常にパワフルな「エンジン」を積んでいるだけなのです。 大切なのは、そのエンジンを、止めようとするのではなく、あなたが、最高の「ナビゲーター」として、その隣に座り、次の、楽しい「目的地」を、一緒に、設定してあげること。
その、地道で、しかし、愛情に満ちた作業こそが、あなたと彼を、ただの恋人から、人生という、予測不能な冒険を共に乗り越える、最高の「戦友」へと、変えてくれるのですから。
ADHDパートナーの方へ
①なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
②なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
③なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
④なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
⑤彼との関係に絶望しているあなたへ
⑥彼を「変える」のを諦めた日に全てが始まった
⑦「カサンドラ症候群」からあなたを救いたい