
なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
【ADHDパートナー②】
「どうして、そんなに、私を責めるの?」
あなたは、ただ、傷ついた気持ちを分かってほしかっただけ。 ただ、一言、「ごめんね」と、言ってほしかっただけなのに。
彼は、謝りながらも、なぜか、必死に、言い訳や状況説明を始めます。 「でも、あの時、こうだったじゃないか」 「そもそも、原因は、こうだったと思うんだ」
その言葉は、あなたの心に、さらに深く、突き刺さる。
「この人は、自分が悪いとは、1ミリも思っていないんだ」
「私の、この悲しい気持ちが、全く伝わっていない」
その絶望的なすれ違い。 あなたはこれまで、何度そのやり取りに落胆したでしょうか。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。
今日は、ADHDのパートナーが、なぜ、素直に「ごめん」が言えないのか。
その、悲しいコミュニケーションの裏側にある、「脳の仕様」について話してみます。
この謎を解く鍵は、ADHDの脳が、困難な状況に陥った時、
自動的に「探偵モード(問題解決モード)」に切り替わってしまう特性にあります。
あなたが「あなたの、あの行動で、私は傷ついた」と訴えている時。彼の脳は、その状況を、解き明かすべき「難解な事件」として、認識してしまうのです。
「事件」を前にした、彼の脳は、「探偵」になります。
「なぜ、彼女は傷ついたのか?」
「その原因となった、僕の行動の、事実は何か?」
「僕の行動は、論理的に、本当に間違っていたのか?」
脳は、その「事件」の、完璧な真相を解明することに、夢中になります。 なぜなら、彼の脳の「スポットライト」は、「事件の真相」という、論理的なパズルに、強烈に、ピントが合っているからです。 その結果、目の前で泣いている、あなたの「悲しみ」そのものが、彼の視野から、消えてしまってうのです。
かつて、僕も、元妻に「ただ、寄り添ってほしいだけなの」と言われ、その言葉の意味が、全く理解できませんでした。 僕の脳は、彼女の「涙」という事件を前に、ただパニックになっていたのです。
あなたの悲しみに彼が寄り添うことができないのは、決して、彼があなたの気持ちを軽んじているからではありません。 むしろ、その逆です。彼は、あなたを悲しませているこの「問題」を、誰よりも真剣に「解決」しようとした結果、意識が問題解決にもっていかれているだけなのです。
僕もよくこんな言葉を投げかけられました。
「自分が悪いとは、思っていないの?」
「本当に悪いと思っている?」
相手は夢中で話している僕をみて、全然悪いと思っていないと判断しているんだと思います。そう見えてしまっているんだと思います。
ただ、悪いと思っていないわけでは無いんです。
問題解決に頭が行っているしまっているせいで、ゴメンと言うので謝り方が雑になっているんです。せっかく誤ったとしても、相手には悪いと思っていないと誤解されます。これが彼の「ごめん」が火に油を注ぐ原因ですね。ここに大きなすれ違いの原因はここにあります。
この悲しいすれ違いを、どうすれば乗り越えられるのでしょうか。
ついつい、「そんなことを話したいわけじゃないの」
と言いたくなってしまうかもしれませんが、彼の「探偵の脳」を否定することはそれもまた火に油なので得策ではありません。
例えば、こんな風に伝えてみるのは、どうでしょうか。
「あなたの、その、問題を解決しようとしてくれる気持ちは、すごく嬉しい。でも、今、私が解決してほしい一番の謎は、『なぜ、こうなったか』じゃないんだ。 『どうすれば、私の、この悲しい気持ちが、少しでも軽くなるか』。 今、解いてほしいの事件はこれなの。 」
この、ほんの少しの「伝え方の工夫」が、全てを変えます。
そして、ADHDの僕らは悲しんでいる人や怒っている人に直面した時に、ついついなぜこの人はこうなってしまっているんだろうと過去や事実の分析に集中してしまいがちですが、「相手の心を、どうすれば癒せるか」というより愛情に満ちた「未来思考」へと向けることが大事なのかなと思います。
ちょくちょく、分かり合えないこともあると思います。 でも、その性質の「違い」の理由を知るだけで、お互いの心は、少しだけ、軽くなるはずです。
ADHDパートナーの方へ
①なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。
②なぜ彼の「ごめん」は火に油を注ぐのか
③なぜ彼は、趣味に没頭すると私のことを忘れてしまうのか
④なぜ彼はあなたの「何気ない一言」でキレるのか。
⑤彼との関係に絶望しているあなたへ
⑥彼を「変える」のを諦めた日に全てが始まった
⑦「カサンドラ症候群」からあなたを救いたい