
僕らが「聞く」のが苦手なのは、
脳が働きすぎているせいかもしれない
【伝える技術②】
「それでね、その時、本当に悔しくて…」
大切なパートナーが悩みを打ち明けてくれている。 僕は、もちろん、彼女の話を心の底から理解したい。力になりたいと、本気で思っている。
しかし、僕の脳は、彼女の話を聞きながら、勝手に、フル回転を始めてしまう。
「その問題の、根本的な原因は何か?」
「彼女の話のその部分はすごい主観的な思い込みがあるよな」
「それを直接言うのは微妙だけど。こんな風に伝えてみようかな。」
「よし、言い伝え方が見つかったぞ!」
そして、彼女が話し終える前に、僕は、その自分の中の「答え」を口にしてしまうのです。
「それはつまり、こうすれば解決するんじゃないか?」と。。。
その瞬間、彼女の顔が、悲しそうに曇るのを何度も見てきました。 彼女が、本当に欲しかったのは、僕の「正論」ではなかったのです。 ただ、黙って、自分の気持ちを受け止めてほしかっただけなのに。。。はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。
今日は、僕らの、この「良かれと思ってやってしまう」コミュニケーションのすれ違い。 その根本的な原因と、僕らの脳の仕組みを逆手にとった、最強の「聞く」技術について、お話しします。
ADHDである僕らが、人の話を、最後まで聞けないことがあるのは、決して、相手への敬意が足りないからではありません。 むしろ、その逆です。相手の話に、真剣に、そして、深く集中しているからこそ、僕らの脳は、勝手に、問題を解決しようと、働きすぎてしまうのです。
僕らの脳は、非常に優秀な「問題解決エンジン」を搭載しています。相手の話という「情報」が入力されると、そのエンジンは、瞬時に、解決策という「答え」を出力しようとします。 その処理速度が速すぎるため、相手が、自分の感情を全て吐き出し終える前に、僕らは、ついその「答え」を提示してしまうのです。これって本当残念ですよね。。。
これは、僕らの優しさであり、誠実さの現れでもあります。 しかし、時にその優しさは相手を深く傷つけてしまうわけです。多くの場合、悩みを話しているパートナーは相手からアドバイスや解決策が欲しいわけではありません。
結局のところ、解決策は自分で見つけたいんです。相手と話すことで気づきを得て、自分で見つけたいんです。
では、どうすれば、僕らは、この「働きすぎる脳」を手懐けることができるのでしょうか。 大切なのは、そのエンジンを、無理やり止めることではありません。その、強すぎるエネルギーの「使い方」を、少しだけ、変えてあげるのです。
まずその方法は、「要約して、確認する」という技術です。
相手の話が一区切りついた時。 僕らの脳が、いつものように「完璧な答え」を導き出し、それを口走りそうになった、その瞬間。 ぐっと、こらえて、代わりに、この魔法の質問を、投げかけてみてください。
「ありがとう。僕の理解が合っているか、確認してもいい?〇〇が原因で、△△という気持ちになっているということで合ってる?」
まず、僕らの脳は、「相手の話を、正しく要約する」という、新しい、知的なタスクを与えられることで、「勝手に答えを出す」という暴走から、解放されます。
そして何よりも、相手は「この人は、私の話を、ただの情報としてではなく、私の『感情』として、深く理解しようとしてくれている」という、安心感と愛情を感じるのです。
もう、僕らが「話を聞けない自分」を責めるのはやめにしましょう。それは、僕らの脳が、誰よりも早く、相手を助けたいと願う、優しさの暴走だったのかもしれません。大切なのは、その優しさを、正しい形で、相手に届けるための「技術」を知ることです。
次の大切な会話の時に試してみてください。 その、活発な脳を、ただ相手を深く理解するために使ってみるという新しい挑戦を。