
なぜ僕らの部屋は片付かず、頭の中は新しいことで溢れているのか【凸凹ADHD⑧】
読み終えた本が、机の上に山積みになっている。 新しく始めた趣味の道具が、部屋のあちこちに散らばっている。 パソコンのデスクトップは、無数のファイルで埋め尽くされている。
ADHDの人の周りは、時にそんな「カオス」な状態に陥りやすいです。 しかし、僕はその混沌を見てこう思うのです。 「別に誰も来ないんだし、部屋が散らかってても良いや」と。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、僕らを長年、悩ませてきた、この「片付けられない」という課題。 その課題が、その逆の「才能」と繋がっている点についてお話しします。
この謎を解く鍵は、僕らの脳が持つ、非常にユニークな「興味の方向性」にあります。
ADHDの脳の興味は、常に「未来」に向いています。 まだ見ぬ、新しい情報。まだ体験したことのない、新しい刺激。 僕らの脳は、「強い好奇心(新規追求性)」という、強力なエンジンを搭載しているのです。
だから、僕らの脳にとって、「読み終えた本」や「完了したタスクの資料」は、もうドーパミンを放出しなくなった、「過去の情報」です。 それらを分類し、あるべき場所に戻す、という地道な作業は、僕らの脳にとっては、「退屈」な行為の一つ。 脳がその作業にエネルギーを供給するのを、拒否してしまうのです。
これは決して僕らが「面倒くさがり」だからということではなくて。 僕らの脳が「過去の情報を整理する」ことよりも、「未来の情報を探しに行く」ことを、常に優先する仕様になっている。ただそれだけのことだったのです。
僕は昔から、自分の部屋が片付かないことにはコンプレックスを持っていましたが、 一度片付けをしだすと、問題なく続けることができました。 しかし、その「やろう」という気になるまでが果てしなく遠いのです。
そんな僕が、まるで別人のように何時間もかけて部屋をピカピカに磨き上げた経験が何度かあります。 それは、初めて、恋人を家に招く、前日の夜でした。
「彼女を、がっかりさせたくない」
「最高の部屋で、迎えたい」
その、強烈な「目的」が生まれた瞬間、僕の脳は、普段は決して作動しない、強力なスイッチを押します。 あれほど苦痛だった「片付け」という行為が、「彼女を喜ばせる」という最高の未来を作るための「ミッション」へと、姿を変えるのです。
僕は、その時はっきりと気づきました。 僕の部屋の「カオス」は、僕が「だらしない」から生まれるのではありませんでした。 それは、僕の脳が部屋を片付けるという、「過去の整理」よりも、常に、新しい知識や、新しい体験という「未来の出来事」に、夢中になっている、何よりの証拠だったのです。
逆に考えると、僕の「整理整頓の苦手さ」は僕の「強い好奇心」が生み出した、必然の結果だったのだと。
もう僕らが、「片付けられない自分」を責めるのはやめにしましょう。 それは、僕らの脳が、過去を整理することよりも未来の「面白いこと」を探すことに夢中になっている、何よりの証拠なのです。
もちろん、誰かと一緒に暮らす上では、最低限のルールは必要です。 共同の空間は、お互いが心地よく過ごせるように合わせる努力をすべきでしょう。
ADHDの人が未来志向の方法で片付けができるのであればそれを活用してお片付けをするのも良いと思います。
例えば、最高の読書タイムを作るという目的を作って、土曜日の朝に最高の読書タイムを作るために部屋を掃除するというのも良いと思います。
また、10分限定とか30分限定でどこまで綺麗にできるかなどのタイムアタックをするのも良いかと思います。僕もそれらを試しながら、できる限り部屋を綺麗にできる方法を見つけて行きたいと思います。
あなたの「弱み」は、あなたの「強み」といつも隣り合わせにいます。「強み」を活用してうまく「弱み」をカバーできる方法はたくさんあります。自分なりのスタイルでより良い毎日を作って行きましょう。
【凸凹ADHD】シリーズ
①あなたの「弱み」は、裏返せば「武器」になる。
②「先延ばし癖」という絶望が、最強の「集中力」に変わる瞬間
③なぜ僕らは「人の痛み」に、誰より敏感なのか
④「退屈な時間」に、1秒も耐えられない理由
⑤「時間」にルーズなのは、脳が「未来」を旅しているからかもしれない
⑥「三日坊主」という絶望が、「リーダーシップ」に変わる日
⑦なぜ僕らは「グループ会話」が苦手で、「1対1」が得意なのか
⑧なぜ僕らの部屋は片付かず、頭の中は新しいことで溢れているのか
⑨なぜ僕らは、絶望の数だけ「最強」になれるのか