凸凹ADHD

なぜ僕らは「グループ会話」が苦手で、「1対1」が得意なのか【凸凹ADHD⑦】

 

「デコくんって、話を聞いてるようで、聞いてない時があるよね」
「すごく面白いときもあるけど、急に静かになったりするよね」
「一度話出すと、話が長いよね。」

ADHDを持つ僕らは、そんな風に周りの人から言われた経験があるかもしれません。そして、そのたびに僕ら自身も混乱するのです。

「なぜ、こんなにも、パフォーマンスにムラがあるんだろう」
「本当の自分は、一体、どっちなんだろう」と。

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。今日は、僕らを長年、悩ませてきた、この「コミュニケーションのムラ」の正体。そして、その「弱み」の裏側に隠された、驚くべき「才能」について、お話しします。

この謎を解く鍵は、僕らの脳が持つ、非常にユニークな「注意」の仕様にありました。

多くの人の脳が、注意を部屋全体をぼんやりと照らす「シーリングライト」のように使えるとしたら、ADHD僕らの脳の注意はたった一つの対象を鮮明に照らし出す「スポットライト」のようなものなのです。

この「スポットライト」は、非常に強力です。 一度、ピントが合った対象は、その細部まで、驚くほどの解像度で捉えることができます。

しかし、その一方で。 スポットライトが当たっていない場所は、僕らの脳にとっては、存在しないも同然。 完全な「暗闇」になってしまうのです。

僕は昔から、複数人での会話が苦手でした。 うまく話せる時もあれば、全く話せない時もある。この「コミュニケーションのムラ」の正体をADHDについての学ぶことで僕は理解することができました。

先日の4人での飲み会の席でした。一人が話し、次の人が、それに被せるように話す。また、別の人が、新しい話題を投げかける。

僕の脳の中では、その複数の会話が混じり合っているように感じていました。僕の「スポットライト」は、誰の話にピントを合わせるべきか、必死に行ったり来たりしています。話の内容は、理解できています。しかし、僕の脳が、その情報を処理し、「よし、今だ!」と、何かを言おうとするタイミングでは、もう、会話の流れは、全く別の場所へと移ってしまっているのです。

ADHDの人の脳は、1対1の会話では、相手という、ただ一つの「ターゲット」に、この強力なスポットライトを、固定することができます。 だから、相手の話を深く聞き、その心の機微に早く気づくことができるのです。

しかし、複数の話者がいるグループ会話では、そのスポットライトが分散し、処理が追いつかなくなってしまうのです。 スポットライトを切り替えている間に、会話のテンポから完全に取り残されてしまうのです。

僕はその時はっきりと気づきました。 僕が普段、グループでの会話で話せなくなる現象は、全く同じ「脳のスポットライトの仕様」から生まれているのだと。

そしてこの「気づき」は、僕に新しい「希望」を与えてくれました。 もし、このスポットライトが、僕の脳の仕様なのだとしたら。 それにただ無意識に振り回されるのではなく、僕自身の意志で、コントロールすればいいのではないか?と。

グループ会話という、複数の役者が同時に舞台に立つ劇場で僕は混乱する「観客」になる必要はないのです。 僕は、その会話の「カメラマン」になればいい。 「よし、今はAさんの話に全てのピントを合わせよう」 「次は、Bさんの表情をクローズアップで捉えてみよう」 そうやって、意識的に「スポットライトを当てる対象」を決めていく。そうすることで、グループでの会話でも1対1の時のように会話ができるかもしれません。(今思いついたので、次回やってみます♪)

もちろん会話のテンポは速いのですし、これは簡単なことではないかもしれません。 しかし、僕はADHDだから「グループ会話が苦手だ」と諦めるのではなく「どうすれば、グループでの会話をより良いものにできるか」と試行錯誤を繰り返すところに面白さがあるはずです。

僕らはピントが合った対象には、その細部まで、驚くほどの解像度で捉えることができるスポットライトを持っています。その特性をうまく使いこなし、素晴らしいコミュニケーターになっていきましょう。

【凸凹ADHD】シリーズ
①あなたの「弱み」は、裏返せば「武器」になる。
②「先延ばし癖」という絶望が、最強の「集中力」に変わる瞬間
③なぜ僕らは「人の痛み」に、誰より敏感なのか
④「退屈な時間」に、1秒も耐えられない理由
⑤「時間」にルーズなのは、脳が「未来」を旅しているからかもしれない
⑥「三日坊主」という絶望が、「リーダーシップ」に変わる日
⑦なぜ僕らは「グループ会話」が苦手で、「1対1」が得意なのか
⑧なぜ僕らの部屋は片付かず、頭の中は新しいことで溢れているのか
⑨なぜ僕らは、絶望の数だけ「最強」になれるのか

 

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