凸凹ADHD

 

僕らが「時間」にルーズなのは、
脳が「未来」を旅しているからかもしれない
【凸凹ADHD⑤】

 

「この作業、1時間もあれば終わるだろう」

そう高を括っていたはずが気づけば半日が終わっていた。 「あと5分だけ」とスマホを手に取ったはずが、気づけば1時間が経っていた。 待ち合わせの時間に悪気は全くないのになぜかいつも間に合わない。

そのたびに、ADHDを持つ僕らは周りの信頼を失い、 自分自身に絶望するのです。 「なぜこんなにも時間の管理ができないんだろう」 「何かが欠けているんじゃないか」

その痛みを伴う問いに何度心をすり減らしてきたでしょうか。

はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日は、僕らを苦しめる「時間感覚のズレ」とその特性がいかにして、 世界を前に進める「独創性」の源泉となるのかについてお話しします。

なぜ僕らの脳は「時間」という直線の上を歩けないのか

この謎を解く鍵は僕らの脳が持つ非常にユニークな「思考の方向性」にあります。

多くの人の脳が物事をA→B→C→Dと、 過去から未来へ原因から結果へと一本の線で順番にたどっていく 「直線的な思考」を得意としています。

それに対して、ADHDを持つ僕らの脳はAという一つの情報から Bだけでなく、全く無関係なXやY、Zといった、 あらゆる方向へと、思考が放射状に広がる「放射状の思考」を得意とします。

「時間」とは、過去→現在→未来へと一方通行で進む人間が作った 最も強力な「直線的なルール」の一つです。

「放射状の思考」を持つADHD脳は、この厳格で融通の利かない直線的な時間の流れをうまく認識するのが苦手なのです。

??僕が、退屈な「計画」を、最高の「冒険」に変えた日
先日、パートナーと「新潟へ旅行に行こう」という話になった時のことです。やるべきことは、非常にシンプルでした。 「レンタカーと旅館を予約する」ただそれだけです。

しかし、それはあまり創造性を刺激されない「作業」でした。
予約サイトを開き日付と人数を入力し表示される結果を上から順番に比較検討する。クオリティの違いはあれど、僕の目にはその違いは微々たるもので、同じようなお風呂と同じような料理に見えてしまいます。そしてまた、良い旅先を見つけたとしても、パートナーと相談してそれが決まるかどうかもわからないという不明瞭さがあります。

その直線的で不明瞭なタスクに対して、なかなかやる気にはならないまま先延ばしをしてしまっていました。

予約ができないまま。気づけば、もう一週間前。
「ここはどう?」っと提案していた旅館は予約済になり。
もう今週末の旅行は諦めたほうが良いかなと思った矢先でした。
ふと、こんなアイデアが生まれました。

「レンタカーだけ借りて、行き当たりばったりの旅行はどう?」
「いつも旅行って行先が一つだよね。それを決めるのを辞めてみない?」
「群馬、富山、新潟、長野でも良いや。ぐるっと回って、その土地、その土地の名所だったり美味しいものを食べて回るんだよ」
「旅館も予約しない。田舎のラブホとかビジネスホテルとか行き当たりばったりで泊まれるところに泊る」

名付けて「行き当たりばったり旅行」。これを提案したときに、まさしく僕の脳のADHDの特性である「放射状の思考」が生み出した思考だなと思いました。こういうプランにADHDの人はワクワクするんです。何が起きるかわからない。何にめぐり会うのかわからない。町で出会った人に、美味しいお店を聞いたり、泊まれるところを聞いたりする。

僕のその突拍子もない提案に彼女は、最初こそ呆れていましたが、彼女も次第に惹きつけられ、最終的には、「レンタカーあれば自由自在だし、フルに一日楽しめそう。新潟長野涼しいところいったり田舎のラブホも一度は止まったみたいかも笑」と返事が返ってきました。

僕の脳は、「時間通りに予約作業を進める」という直線的なタスクは苦手でした。しかし、その代わりに「ありきたりな旅行を、いままで体験したことのない全く新しい経験へと再構築する」という独創的な価値を生み出すことができたのです。

もう「時間にルーズな自分」を責めるのはやめにしましょう。それは僕らの脳が「時間」という決められた直線的なルールに縛られることを拒み、常にもっと面白い新しい「可能性」を探している何よりの証拠なのです。

誰よりも、自由で、創造的に毎日を謳歌してください。

【凸凹ADHD】シリーズ
①あなたの「弱み」は、裏返せば「武器」になる。
②「先延ばし癖」という絶望が、最強の「集中力」に変わる瞬間
③なぜ僕らは「人の痛み」に、誰より敏感なのか
④「退屈な時間」に、1秒も耐えられない理由
⑤「時間」にルーズなのは、脳が「未来」を旅しているからかもしれない
⑥「三日坊主」という絶望が、「リーダーシップ」に変わる日
⑦なぜ僕らは「グループ会話」が苦手で、「1対1」が得意なのか
⑧なぜ僕らの部屋は片付かず、頭の中は新しいことで溢れているのか
⑨なぜ僕らは、絶望の数だけ「最強」になれるのか

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