
僕の「忘れっぽさ」が、二人の関係を救う理由
【ADHD 離婚からの恋愛⑥】
「ごめん、忘れてた…」
この一言で、あなたは、これまでに、どれほどの信頼を失い、どれほど大切な人をがっかりさせてきたでしょうか。 「忘れっぽい」という特性は、自己肯定感を削り取る、最も根深い呪いの一つかもしれません。
しかし、もし、その「忘れっぽさ」が、二人の関係を、無用な争いや過去の痛みから守る、最高の「セーフティネット」だとしたら、どうでしょう?
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコです。 今日のテーマは、あなたの「忘れっぽさ」という名の弱点を、好きな人の前で、最も安心できる「許す力」という名の強みへと、見事に変えてしまう方法についてです。
ネガティブな感情も「忘れてしまう」脳
僕らの脳の「短期記憶(ワーキングメモリ)」は、少しユニークな働き方をします。 重要なタスクや、頼まれごとを、いとも簡単に忘れてしまう。これは、生活における、紛れもない「弱み」です。
しかし、この「忘れやすさ」は、ネガティブな感情に対しても、全く同じように機能するのです。 相手への怒り、失望、悲しみ…。そういった、関係を蝕む毒素のような感情もまた、僕らの脳は、長く記憶しておくのが苦手なのです。
僕が、気まずい空気を「新しい思考」で上書きしてしまった日
それは、デートの帰り道のことでした。 僕が、良かれと思って話したアドバイスが、少しだけ彼女のプライドを傷つけてしまったのかもしれません。駅に向かう道すがら、二人の間の会話が途切れ、少しだけ気まずい空気が流れていました。
「ああ、またやってしまったな…。この空気を変えなければ…」
僕は、自分の軽率さを、心の中で反省していました。しかし、家に帰って一人になった、その数分後。僕の脳は、いつの間にか、全く別のことを考え始めていました。
「この動画めっちゃおもしろいな」「次の週末、新しい登山ルートを開拓してみようか」
僕のADHDの脳が持つ「内なる多動性」は、目の前のネガティブな感情よりも、未来のワクワクするような「新しい思考」を見つけ出し、そちらにエネルギーを注ぎ始めてしまうことが多々あります。
そして、翌朝。 僕は、すっかり昨夜の気まずい空気を忘れ、彼女に「おはよう!昨日はありがとう、楽しかったね!」と、何の悪気もなく、いつものメッセージを送りました。 彼女からの返信は、少しだけ、間がありました。 「…昨日のこと、もう気にしてないの?」
その言葉に、僕は、ようやく昨夜の出来事をはっきと思い出しました。 「あ、ああ…!ごめん、そうだよね。本当にごめん!思い付きで発言しちゃったよね。」
「副作用」をセットで伝える
その時、彼女は、電話の向こうで、呆れたように、でも、少しだけ安心したように、笑ってくれました。 「デコくんって、面白いね。私なら、一日中モヤモヤしてるのに」と。それに対して僕は、こう答えたました。
「そうみたい(笑)。嫌な気持ちでいつづけることも実は苦手なんだよね。ついつい他のことに意識が行ったりするし、面白いことに気が取られちゃうな。だから、ケンカしても、なかなか根に持てない。それが、僕の良いところでもあると思うけどね」
そして、僕は、こう付け加えました。
「でも、これは完全に諸刃の剣でさ。この『忘れっぽさ』のせいで、頼まれた買い物だったり、他にもいろんなことを同じように忘れちゃうこともあるんだよね。だから、本当に大事なことは、念のためにも、確認のためにも、教えてくれるとすごく助かるんだよね」
あなたの「忘れっぽさ」は、決して、欠点ではありません。 それは、過ぎ去った過去の痛みに、いつまでも心を縛り付けられることなく、常に「今」を、新しい気持ちで始められる、最高の「許す力」でもあるのです。
その才能を、まず信じてあげてください。そして、その強みと、その「副作用(弱み)」を、正直に、そしてユーモアを持って、好きな人に伝える。 その誠実さこそが、あなたを、器の大きな、信頼できるパートナーへと、変えてくれるのですから。
ADHD離婚からの恋愛シリーズ
①僕が「過去」と向き合うまで、次の恋は始まらなかった
②なぜ僕らはマッチングアプリでこそ輝けるのか
③初デートで「お洒落なレストラン」を予約するな
④僕が「弱み」より「強み」にフォーカスする理由
⑤その「衝動性」が、最高の「決断力」になる日
⑥僕の「忘れっぽさ」が、二人の関係を救う理由