凸凹ADHD

 

初デートで「お洒落なレストラン」を予約するな
【ADHD離婚からの恋愛③】

 

初デートの王道といえば、「お洒落なレストランでのディナー」。 しかし、ADHDを持つ僕らにとって、それは、時に、避けるべき「罠」になることがあります。

静かな空間。カチャカチャと響く、食器の音。テーブルマナー。 「さあ、何かこの場に適した、気の利いた話をしなければ…」 「かっこよく、スマートに見せなければ…」

そのプレッシャーで頭は真っ白になり、僕の脳の「多動性」や「衝動性」といった、自由なエネルギーは完全に封じられてしまう。 結果、僕は、ただ「普通の人」のフリをすることに、全エネルギーを使い果たしてしまうのです。

これでは、僕の本当の魅力など、1ミリも伝わるはずがありません。

なぜ、「お洒落なレストラン」が苦手なのか

誤解しないでほしいのは、僕らは、目の前にいる、魅力的なあなたとの会話に「退屈」しているわけでは、決してない、ということです。 むしろ、逆です。あなたという存在そのものが、僕の脳にとっては、最高の「刺激」なのです。

問題は、「お洒落なレストラン」という、過剰に演出された「環境」の方にあります。

ADHDの脳は、自由で、予測不能で、自然体である時に、最高のパフォーマンスを発揮します。 しかし、「お洒落なレストラン」という環境は、 「こう振る舞うべき」という、無数の暗黙のルールと、 「スマートに見せなければ」という、過剰な自意識を、自らの脳に強制します。

その結果、僕らは、目の前のあなたに集中するのではなく、「失敗しないように、普通の人を演じる」という、最も苦手な作業に、脳のリソースのほとんどを奪われてしまうのです。

僕らは、自分の「弱み」が最大限に露呈する場所で、わざわざ戦う必要はないのです。

では、どうすればいいのか? 答えは、シンプルです。 デートの主導権を、自分から握り、自分の「得意」な土俵へと、相手を誘うのです。

僕が、今のパートナーとの初デートで提案したのは、お洒落なレストランではありませんでした。 僕が選んだのは、代々木公園でのピクニックデートでした。アウトドアが好きな彼女のために、僕はシートを広げ、バーナーでお湯を沸かし、彼女が好きだと言っていたドリップコーヒーを、その場で淹れてあげました。

「外で淹れてくれるんだ、嬉しい!ありがとう」

体を動かし、五感を使い、新しい刺激に触れる。 すると、不思議なことに、「何か話さなきゃ」というプレッシャーはどこかへ消えていました。 会話は、僕らの目の前にある「コーヒーを淹れる」という共通の体験から、ごく自然に、そして無限に生まれてくるのです。 共通の趣味の話で、僕らは大いに盛り上がりました。

僕の「多動性」は、ここでは「準備をする行動力」になりました。 僕の「好奇心」は、彼女にとって「一緒にいて楽しい、面白い知識」になりました。 そして、コーヒーを淹れるという一つの作業に没頭する僕の「過集中」は、彼女の目には「頼りがいのある姿」として映っていたかもしれません。

その後、僕らは公園を散策しながら、近くのレストランまで歩いて向かいました。その道のりもまた、楽しい会話の時間になったのです。

もし、あなたがこれから、大切な誰かとの初デートを控えているのなら。 「お洒落なレストラン」を予約する前に、一度、立ち止まってみてください。

あなたを、退屈で、つまらない人間に見せてしまう場所で、勝負する必要はありません。 あなたの「多動性」や「好奇心」が、最高の魅力として輝く場所。 そんな、「二人で何かを体験できる場所」を、あなたから、勇気を出して提案してみてください。

その、あなたらしい、少し変わったデートプランこそが、相手の心を掴み、 「この人との時間は、なんだか、他の誰とも違う。もっと一緒にいたい」 そう思わせる、最高のスパイスになるのかもしれません。

ADHD離婚からの恋愛シリーズ
①僕が「過去」と向き合うまで、次の恋は始まらなかった
②なぜ僕らはマッチングアプリでこそ輝けるのか
③初デートで「お洒落なレストラン」を予約するな
④僕が「弱み」より「強み」にフォーカスする理由
⑤その「衝動性」が、最高の「決断力」になる日
⑥僕の「忘れっぽさ」が、二人の関係を救う理由

その他のおすすめ記事

ついに完成。パートナーの「トリセツ」 【ADHD人間関係⑩】 はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです‥ 続きを読む
「あ、ありがとう!」 パートナーが、僕のために、何かをしてくれた時。 僕らの心の中には、間違いなく、感謝の気‥ 続きを読む
なぜ彼は、私の話を「聞いていない」のか。 【ADHDパートナー①】 「それでね、今日、会社でこんなことがあ‥ 続きを読む