
僕が「過去」と向き合うまで、次の恋は始まらなかった
【ADHD離婚からの恋愛①】
離婚後、僕の周りに、意外にも、孤独はありませんでした。 知り合いは多く、毎日のようにいろいろなことがおきたり忙しく過ごし、週末はいつも賑やかな場所にいました。酒とタバコ、そして絶え間ない刺激で、僕は自分の心を埋めようとしていたのです。それは、心の奥底にある「痛み」から、ただ必死に目をそらすための、終わりのない不毛なループでした。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日から、ADHDの僕らが、最高のパートナーと出会い、愛を育むための、新しいシリーズを始めます。
出会いの場は、僕の「苦手」と向き合う場所だった
「痛み」から逃れるように、僕はマッチングアプリを始めました。ADHDの「新規追求性」という特性が、ここでは僕を強く後押ししてくれました。
新しい人と出会い、新しい話を聞く。その刺激的なプロセス自体が、僕にとっては楽しく、毎週末のように、たくさんの女性と会うことができたのです。
しかし、そこで僕を待っていたのは、楽しいだけの時間ではありませんでした。 離婚歴のある僕に対して、彼女たちが抱く、当然の疑問。
「なぜ、離婚したのだろう?」
この、シンプルで、しかしあまりにも重い問いに、僕は、うまく答えることができませんでした。DV?借金?浮気?——そうではない。しかし、本当の理由、つまり、僕のADHDの特性が原因で生じたすれ違いについて、当時の僕は、まだそれを説明するための「言葉」を持っていなかったのです。
過去から逃げる脳が、過去と向き合った日
そもそも、僕らADHDの脳は、「過去」と向き合うのが、致命的に苦手です。 過去の失敗の痛みや、退屈な内省は、僕らの脳が最も嫌うもの。常に「未来」の新しい刺激を探しているからです。
しかし、皮肉なことに。 僕が「未来」の新しい出会いを求めれば求めるほど、目の前の女性たちは、僕に「過去」についての、最も重い問いを突きつけてきました。
それは、僕の脳が最も避けたい、苦痛な作業でした。 しかし、その逃げられない状況だったからこそ、僕は、初めて自分の過去の失敗と、その本当の意味を、言語化することができたのです。
なぜ、前の結婚は、うまくいかなかった? なぜ、彼女は、あんなにも怒り、悲しんでいた? 『話を聞いていない』と言われた時、僕の脳で、一体、何が起きていた? 『寄り添ってほしい』という、彼女の願いに、なぜ、僕は応えられなかった?
新しい出会いの場で、この問いに何度も向き合う中で、僕は、自分なりの『ストーリー』を、少しずつ書き上げていきました。
まず出会ってから結婚までのプロセスがあまりにも早すぎたこと。切迫早産などあり彼女とは離れ離れの期間が9か月ほど続いたこと。赤ちゃんを育てるということはとても繊細だったこと。それに対して僕はあまりにも鈍感だったこと。そこで亀裂が生まれたこと。それが修復できなかったこと。それができなかった理由。それが無理だった原因はどこにあるのか。そして、その状況は今後避けることができるのか。
自分という人間のことを分かっているようで全然わかっていなかったことをADHDを学ぶたびに思い知らされます。
良い恋愛とは、テクニックで手に入れるものではありません。 それは、自分という人間の「凸凹」を深く理解し、その上で、相手とどう向き合っていくかを、自分の言葉で語れるようになることです。
最高の出会いは、いつ、どんなタイミングで訪れるか分かりません。 しかし、その出会いを、本物の関係へと育むことができるかどうかは、自分自身の物語を、自分の言葉で語れる「準備」ができているか、そこにかかっているのだと、僕は思います。
全ての過去は、そのためにこそあったのですから。
ADHD離婚からの恋愛シリーズ
①僕が「過去」と向き合うまで、次の恋は始まらなかった
②なぜ僕らはマッチングアプリでこそ輝けるのか
③初デートで「お洒落なレストラン」を予約するな
④僕が「弱み」より「強み」にフォーカスする理由
⑤その「衝動性」が、最高の「決断力」になる日
⑥僕の「忘れっぽさ」が、二人の関係を救う理由