
結婚できますか?
【ADHDと結婚①】
ADHDを持つ成人の離婚率は、そうでない人々に比べて、約2倍にもなると言われています。 いくつかの研究が、そんな、残酷な「現実」を、ADHDの僕らに突きつけます。
これは、ただの、冷たい数字ではありません。 その一つ一つの数字の裏には、愛し合っていたはずの二人が、すれ違い傷つけ合い、そして、離れていってしまった悲しい物語があります。 そして、僕自身も、その一人でした。
「どうして、私の気持ちを分かってくれないの?」
「いや、僕は、ちゃんと君のことを考えているよ」
その、永遠に噛み合わない、二人だけの会話。 お互いに、愛し合っているはずなのに。 なぜか、同じ家にいても、心は、どんどん、離れていってしまう。
はじめまして、「凸凹ADHD」のデコさんです。 今日から、ADHDとパートナーシップについて、より深く、そして、より希望に満ちた、新しいシリーズ『ADHDと結婚』を始めます。
かつて、僕は『ADHD離婚』というテーマで、僕自身の、痛みを伴う、すれ違いの物語を書きました。 あのシリーズを通して、僕は、自分自身の「過去」と向き合いました。 そして今。 僕は、この記事を読んでくれている、あなたと一緒に「未来」のための話がしたいと思います。
ADHDの特性を学び、幸せな結婚にたどり着くために。 どうすれば、ADHDの人は、離婚という最も悲しい結末を避け、素晴らしいのパートナーシップを、築いていけるのか。その、具体的な「地図」を、一緒に、描いていきたいのです。
まず、何よりも先に、知っておいてほしいことがあります。 あなたと、ADHDの彼が、すれ違うのはどちらかの「愛情」が足りないからではありません。 それは、あなたと彼が、同じ部屋にいても、全く違う「世界」を、生きているからです。
ADHDの脳と定型発達の脳は情報を処理する方法が、根本的に違います。 ADHDの脳はよく「フィルターがない」と表現されます。
多くの人の脳が、会話中の重要な言葉だけに、注意を向けることができるのに対し。 僕らの脳は、あなたの言葉も、窓の外を飛ぶ鳥の声も、昨日見た映画の感動も、今感じている椅子の座り心地も、全ての情報を、同じ熱量で、同時に、受信してしまうのです。
だから、あなたが、真剣な話をしている、その最中に。 僕の頭の中では、あなたの、たった一つの言葉をきっかけに、全く関係のない「物語」が、始まってしまっていることがある。 それは、決して、あなたを、軽んじているわけではない。 ただ、僕の脳が、そういう風にできているだけなのです。
この、脳の根本的な「違い」が、二人の間に悲しい「すれ違い」を生み出します。「すれ違い」のパターンはこうです。
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彼の「特性」が現れる
(例:あなたとの会話中に、彼の注意が、別のものに、逸れてしまう)
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あなたの、当然の「解釈」
(「私の話は、つまらないんだ」「彼は、私のことを、もう愛していないんだ」)
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あなたの、自然な「反応」
(もっと、注意を引こうと、言い方がきつくなる)
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彼の、防衛的な「反応」
(突然の「批判」にパニックになり心を閉ざすか反撃してしまう)
そして、いつしか、二人の争点は、「彼が注意散漫であること」から、「お互いを、どう傷つけ合ったか」へと、すり替わってしまう。 これこそが、多くのカップルが、抜け出せなくなる絶望的な「負のループ」の正体です。要はお互いの解釈が大事です。ADHDパートナーの人はADHDの特性を理解することで、間違った解釈をすることを防げます。ADHDの人は、パートナーから、イライラした感情、冷たい感情、距離を感じる感情を向けられたと感じた場合は、自分には原因が無いと思ったとしても、何かしらの原因や理由がある場合がほとんどです。パートナーの気持ちを詳しく聞いてみてください。
このシリーズを通して、僕があなたに伝えたいこと。 それは、ADHDの彼を「変える」ための魔法ではありません。 それは、ADHDの人とそのパートナーの二人がお互いの「世界」を理解するための、新しい「共通言語」を手に入れることです。ADHDのパートナーは、ADHDの彼の最高の「通訳」になる。 そして、当事者であるADHDの僕らは、自分の「世界」を、優しく相手に伝える、最高の「翻訳家」になる。
二つの全く違う「国」が手を取り合い、新しい「同盟」を結ぶ。 その希望に満ちた物語をここから始めたいと思います。
【ADHDと結婚シリーズ】
①結婚できますか?
②なぜ些細なことから喧嘩になる?
③ADHDだから仕方ないじゃないか
④ありがとう。でも、僕は子供じゃない。
⑤こんな人とは結婚しないで
⑥「察してちゃん」という名のサイレントテロリスト
⑦ADHDはどんな人と結婚する?
【ADHD離婚シリーズ】過去の自分と向き合った離婚シリーズはこちら
①一つのことにしか意識を向けられない不器用な真実
②「寄り添ってほしい」と言われた僕が、途方に暮れるしかなかった理由
③僕の「得意なこと」は、なぜ努力として認められなかったのか。
④「それくらい自分で考えて」が、僕には一番難しい呪文だった。
⑤なぜ僕は「名もなき家事」が全く見えなかったのか。
⑥なぜ僕らは、「二人でいる時」が一番孤独だったのか。
⑦妻のイライラから「逃げる」以外の選択肢を、なぜ持てなかったのか。
⑧なぜ僕は、妻からの「パシリありがとう」に喜んでしまったのか。