凸凹ADHD

 

でも、一人では難しい。じゃあ、相棒を見つけよう。
【ADHD目標と計画⑤】

 

前回の記事で、僕らは完璧な計画を手放し、自分だけの「タスクメニュー」という新しい武器を手に入れました。

「これなら、僕でも続けられるかもしれない!」

そう希望に胸を膨らませたはずだった。 でも、すこし時間が経つと不安に感じてしまうことはありませんか? 「このやり方で、本当に合ってるのかな…」 「今日は、スターターメニューさえできなかった…」 そんな時、たった一人で自分の心と向き合うのは、あまりにも辛い。

ADHDの僕らの旅は、なにも一人きりで進める必要なんてなかったのです。 今日は、その旅を共に歩んでくれる「相棒」を見つけ、一緒にこの仕組みを最強の武器に育てていく方法についてお話しします。

なぜ僕らに「相棒」が必要なのか?

ADHDの脳は、「人に見られている」という意識や、「誰かとの約束」がある時に、普段以上の集中力を発揮することがあります。これは、脳内の報酬系が刺激されるためだと言われています。

一人だとつい後回しにしてしまうことも、 「次の週末、進捗を報告する約束がある」 と思うだけで、不思議と最初の一歩が踏み出せたりするのです。

これは「監視」ではありません。 お互いを尊重し、励まし合う「ポジティブな外部刺激」です。孤独な戦いを、楽しいチーム戦に変えるための、最も効果的な戦略なのです。

パートナー、仕事仲間、友人。誰でも構いません。大切なのは、あなたの挑戦を応援してくれる人と、シンプルな約束を交わすことです。

まず、誰と組むかが重要です。ADHDの人同士で、お互いにADHDについても理解があり、さらに成長したいというような人は理想的かと思いますが、なかなか見つけることも難しいと思います。
その場合はまずは以下の点に当てはまる人を探してみましょう。
批判しない人: 「なんでできなかったの?」と責めるのではなく、「そっか、今日は難しかったんだね」と受け止めてくれる人。
あなたの挑戦を応援してくれる人: あなたが前に進もうとしていることを、心から応援してくれる人。
できれば、相手も何か挑戦している人: お互いに報告し合うことで、対等な関係を築きやすくなります。

つぎに、お互いが負担にならない、ごく簡単な約束事を決めましょう。重たいルールは不要です。

  1. 定期的に、報告し合う時間を設ける

    • 毎日やるなら(手軽さ重視) 朝に「今日やるメニュー」を宣言し、夜に「できたこと」を報告する。LINEやメッセンジャーで一言送るだけでもOK。

    • 週1でやるなら(習慣化重視) 週末などに15分ほど時間をとり、「今週の振り返り」と「来週のタスクメニュー更新」を一緒に行う。

    • 2週間に一度なら(じっくり対話重視) 一緒にご飯を食べるなど、リラックスした時間を作る。その中で、お互いに1時間ずつ、この2週間で「できたこと」「うまくいかなかったこと」「次への作戦」などを、相手にじっくり聞いてもらう時間にする。

  2. 報告は「できたこと」をメインに

    • できなかったことを責める時間は、必要ありません。「今日はスターターメニューができた!」「低エネルギーのタスクを1つクリアした!」など、どんなに小さなことでも「できたこと」を共有し、一緒に喜びましょう。

  3. 困った時は、一緒に「作戦会議」を開く

    • 「どうもこのタスクが進まない…」という時は、一人で悩まずに相談します。相手は解決策を出す必要はありません。「どうすれば、もっと簡単になるかな?」と一緒に考えてくれるだけで、僕らの脳は新しいアイデアを思いつきます。

<具体的な会話のイメージ(2週間に一度、じっくり話す場合)>
(あなたの番:相手は相槌を打ちながら、あなたの話を遮らずに聞くことに徹します)

あなた:「この2週間、まずはできたことから話すね。Noteの記事は、毎日書くことを続けられたんだ。あと、朝にPCの電源を入れるっていうスターターメニューは、思ったより効果があったよ。」
あなた:「逆に、システム開発のタスクは全然手につかなくて…。いざやろうとすると、何から手をつけていいか分からなくなっちゃって。結局、他の仕事に手がいっぱいで開発は進められたんかったんだ。」
あなた:「だから、次の2週間の作戦としては、システム開発のタスクメニューをもう少し細かくしてみようと思うんだ。『気になるデザインの修正』とかじゃなくて、『トップページのボタンの色を変える』みたいに、もっと具体的なタスクに分解してみようかなって。どう思う?」

(ここまで話を聞いた後、相手からのフィードバック)

相棒:「なるほどね。できたこと、ちゃんとあるのが素晴らしいよ!スターターメニューが効いてるって発見も大きいね。開発のタスク、確かに少し大きいかも。もっと具体的に分解するの、すごく良い作戦だと思うよ!」

このやり取りのポイントは、管理する・されるの関係ではない、ということです。 お互いが対等な立場で、それぞれの挑戦を応援し合う、心強いサポーターになること。

一人で進む道は、時に暗く、険しいかもしれません。 でも、隣に「がんばれ!」と言ってくれる人がいるだけで、その道は驚くほど明るくなります。

最高の相棒を見つけて、一人ではたどり着けなかった場所へ、一緒に歩き出してみませんか?

 

ADHD目標と計画シリーズ

①なぜ僕らの「壮大な目標」は気付けば消えてしまっているのか
②退屈な作業を魅力的な「プロジェクト」に変える方法
③ADHDの「完璧主義」は行動を止めてしまう
④完璧な計画はゴミ箱に捨ててみた
⑤でも、一人では難しい。じゃあ、相棒を見つけよう。
⑥あなたの「行動記録」は宝の山だよ
⑦タスク管理のその先、「なりたい自分」に近づく方法
⑧最強のシステムが「飽き」に負けるとき。僕らの最終戦略
⑨僕らの取り組みは、まだ始まったばかり

 

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